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秋の公園・観覧車

【二次創作SS】【黎翔×夕鈴】【現代パラレル】

・二人は同じ会社の同僚(黎翔さん部長、夕鈴平社員)です
・年齢詐称有り


-*-*-*-*-*

「さあ、次は観覧車に乗ろう?」

水族館から観覧車までは少し距離があり、暗くなり始めた公園を二人で歩いた。
太陽が赤く色づく時間だったから、心なしか周りの草木はしぼんでしまっていたような気がするけれど、そんな事はお構いなしというように、夕鈴は僕の前をピョンピョン跳ねながら歩いている。
長い事夕鈴と一緒に居て分かった事だけれど、本当に楽しんでいるとき、夕鈴はまるで兎が跳ねているような仕草をしながら歩く。
昼間、公園を散策している時にブロックの上をそういう風に歩いていたから楽しんでいてくれているとは思っていたけれど、何もない所でもその仕草をされると、本当に楽しんでいてくれているのがよく分かって嬉しかった。
飛び跳ねる事で風に舞う夕鈴の髪が夕日に照らされて普段とは違う色合いをしている。風のせいで少し乱れているようだけれど、そんな事はどうでもよかった。

「もう部長ー、遅いです」
「ごめんごめん、でも夕鈴が早すぎるよ」

前を歩いていた夕鈴が急に後ろを向いて頬を膨らましながら言ってきた。
笑いながらそう返答すると夕鈴が腕にくっ付いてきてくれて、思わず笑う。
僕にしがみ付きながらちょっと俯いてしまった夕鈴に対し顔を覗きこみながら「どうしたの?」と声を掛けると「・・・ください」と聞こえてきて「ん?」と問いかければ

「何処にも行かないで下さい」なんて頬を染め、おまけに上目遣いをされて、思考が全て止まってしまう。
「何処にも行かないよ?」スーツのポケットに入れていた両手を出して夕鈴の頭をそっと撫でる。
風で少し乱れた夕鈴の髪を直しながらそう言ったのに
「髪が乱れちゃいます!」なんて今度は怒られた。
「ごめんごめん」僕が撫でたせいで崩れたらしい髪を軽く直してあげて、今度こそ二人で手を繋いで観覧車まで歩いていった。

昼間にお弁当を食べた芝生のスペースを横切り、観覧車の近くにある小さな池も素通りしてようやく観覧車についた。
秋の夕日はとても短くて、観覧車の周辺についた頃にはまだ空が赤かったのに、順番待ちをして乗る頃には空は日が落ちかけていた。
このタイミングだと丁度観覧車の頂上に付く頃にまばらに点灯している夜景が見られると思う。本当はもう少し遅い時間に乗りたかったけれど仕方ない。
すこし順番待ちをしてから二人だけで観覧車に乗った。この観覧車はグループ同士の相席をしない観覧車だというのは知っていたからこれは予定通り。夕鈴とは向かい合わせになるように座る。

観覧車に乗り、公園の木々よりも高い所にくると周辺の景色がよく見える。ちょうど回りの夜景は電気がポツポツとつき始めた所で、やっぱり一番綺麗な夜景を見ることができなさそうだと足を組み、頬杖をついてため息を付きながら外を見た。すると急にゴンドラが揺れた気がして何事だとあわてて外を見ていた顔をゴンドラの中に戻すと、反対側に座っていたはずの夕鈴が何故か僕の近くにいて、ネクタイを引っ張られて咄嗟の事に何も反応できないでいたら夕鈴の唇が僕の唇と重なった。

「そんな悲しそうな顔、しないでください」

怒ったような、でも悲しそうな顔をした夕鈴の顔がとても近くにあり、その赤くて可愛い顔をどうしても触って見たくて、頬に手を添えると夕鈴の体がピクリと揺れる。

「駄目、でしたか?」
「駄目じゃないけど・・・」

この後、僕は何を言えばいいんだろう?

「キス、したかったんです。こういう時じゃないと部長に届きませんから・・・」
「・・・・僕からも、していい?」

夕鈴がそっと目を閉じたのは、OKのサイン
あまり深くなく、でも甘さを感じるくらいのキスをしてからまた夕鈴の顔を見つめた。
夕鈴の頬に添えたままの僕の手、少し潤んだ夕鈴の目。お互いそのままの状態で動けない。
勇気を振り絞っていつか言おうと思っていた事を言ってみる。

「夕鈴・・・ ぼくと・・・け「あっっ!!」」

不意に夕鈴が僕から離れる。
一瞬何が起こったのか分からなかった。ようやく状況が確認できると、さっきまで僕の腕の中にいたはずの夕鈴がいつの間にかゴンドラのガラスに張り付くようにして夜景を見ていた。

「あそこのライトアップの瞬間が見えました!!」
それは近くにある大きな遊園地。毎日ライトアップしているけれど、点等時間は丁度今、この瞬間だったんだろう。

「そ。。。そう。」

その後は遠くに見える最近できた塔と橋のライトアップを楽しんでいたらあっという間に観覧車に乗る時間は終わってしまった。
暗くなってライトアップされた観覧車を半ば放心状態で降りた。

「部長?」
「なんでもない・・・」
「?」

自分が何をしたか本気で分からなさそうにする夕鈴に何とか返答してまだ夕食の席で言うチャンスはあるとぐっと心の中で決意したとたん、今度は仕事用の携帯電話に着信があった。
相手は李順で、至急戻ってきて欲しいという内容だった。
ため息をつきつつ「分かった」とだけ返答して電話を切る。

「夕鈴ごめんね、また行かなくちゃ行けないみたい」
「はい・・・分かりました・・・・」

公園を後にしてあまり会話もなくマンションまで夕鈴を送り、車を返却して仕事場に行くと笑いながら浩大がやってきた。

「理事長さん、デート楽しかった?」
「浩大・・・ 見てたのか?」
「観覧車に乗る辺りからかな~? 最近忙しくて理事長さんの機嫌が悪いから李順さんが調整して今日の午後無理に空けたみたいだったけれど、急なトラブルってあるものだネ」
ケラケラと笑いながら言う浩大に対してなぜか怒りがこみ上げてきた。
「おっと、一応デートが終わる辺りに連絡するから監視してくれって言い出したの李順さんだよ?」
「浩大・・・ 一回長期休暇でも取ったらどうだ?」
「それは嬉しいけど、李順さんが長期はくれないんじゃない?」

机に座り、ため息を付きながら夕鈴にメールを打つ。

“今日は帰れそうにないけれど、また休みが取れたら今度こそ買い物に行こう?”

そのメールを送った瞬間、李順が部屋にやってきてトラブルの対応に追われる。
それが終わるといつの間にか日付が変わっていて携帯を見ても夕鈴からの返答はなく、今日何度目になるのか分からないため息を付いて家に帰る事にした。

「夕鈴、今度こそ買い物に行こう?」
「部長の今度はいつでしょうか?」

次の日また休日出勤する僕に対し、玄関で冷ややかな台詞が送られてきた。
すると同時におねだりされるキス。僕はたまに思う。僕は夕鈴に完全に手玉に取られていると・・・。

「今日も早く帰ってくるように頑張ってくるよ」
「私今日、近くの図書館に行ってきます。居なかったらごめんなさいね?」
「うん・・・ 分かった・・・」

夕鈴の予定を聞かされ、重い気分で玄関を出ると下に降りるまでになんとか気持ちを切り替えてマンションを出た。



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秋の公園・水族館




【二次創作SS】【黎翔×夕鈴】【現代パラレル】

・二人は同じ会社の同僚(黎翔さん部長、夕鈴平社員)です
・年齢詐称有り


-*-*-*-*-*


「ここの公園、水族館と観覧車もあるんだ。先に水族館に行ってみない?」
「水族館ですか!? 私暫く行ってないので楽しみです! 早く行きましょう!?」

秋風が吹く公園で僕と手を繋ぎながら早く、早くと手を引く夕鈴。それにあわせて僕も少し早足で歩く。

水族館について入場券を買い、長い階段を歩くとようやく水族館の入り口にたどり着く。
水族館の入り口は半円状の透明なドーム型の建物で、そこから地下にもぐる様な構造になっている。
その半円のドームの周りは池になっていて、たまにここは噴水が高く舞い上がっているらしい。

その建物から中に入ると、まず大きな水槽が目の前に飛び込んできた。
水族館の一番の売りである大水槽の中には種類にもよるけれど、3mくらいまで大きくなる魚や、群れを何百匹といった規模で形成しながら泳ぐ小さな魚などが数種類ほど周回していてすごい迫力がある。この水槽を一日眺めている事もできそうなくらい。
夕鈴もその圧倒的な迫力に見入っているようで、二人で手を繋ぎながら水槽の前から動けなくなっていた。
しばらくそのまま二人で水槽を眺める。周りの家族連れの子供達が凄い、凄いと言いながら僕達の周りを走り回っていたけれど、そんなことはまったく気にならなかった。
水槽を十分眺めて次のフロアに下りると、今度は世界の海の魚達が飼育されているスペースになる。
人ごみを掻き分けながら、順路通りに歩いていくと設置されている水槽は小さなスペースに区切られた水槽で、一つ一つの水槽の中には色とりどりの魚達が思い思いに泳いでいたり、魚が砂に潜ったりしていて、水槽をまた二人でじっくりと眺めながら歩いた。
珊瑚の中にいる黄色と青い魚がゆったりと動いている水槽をみて夕鈴は少しだけ悲しそうな表情をしたような気がしたけれど、気が付かないふりをした。

それにしてもここの水族館はイルカやアシカのショーが無いかわりに、海鳥が水中を飛ぶように泳ぐ姿が楽しめるような水槽、波が常に機械で立てられている水槽には海藻を展示して、中に数種類の魚が優雅に泳いでいる。
じっくり見なければ数十分で終わってしまいそうなコーナーだったけれど、夕鈴は一つ一つの水槽を食い入るように見つめ、そのスピードに合わせて歩くから時間がかかる。
渚の生物を展示するために海の浅瀬を再現したスペースでは、手を伸ばせばその中で飼育されている生物に手が届きそうで、触りたいけど触ってはいけない。とウズウズする夕鈴が可愛かった。

順に歩いていくと、今度は僕達の腰ほどの高さしかない変わった形の水槽があり、その中にはサメやエイがいて、誰でも触れるようになっていた。

「触っていいらしいよ?」
「怖くて触れないですよ」
「人を噛まない種類なんじゃない?」

そんな会話をしながら触れないと言いつつ、数分後にはおそるおそるサメに触っている夕鈴がいた。

次はペンギンが展示されている部分に到着。入り口はトンネルのようになっていて、片面がガラス張りになっていてペンギンの水槽の中が見える。ガラスにそって水にプカプカ浮きながらこちらを見ているペンギンのお腹が白くて少し可愛い。
他には凄いスピードで水の中を泳ぎまわるのも数羽いて、泳いでいるペンギンの体にはそのスピードを表現するかのように空気の粒が無数についている。

「わぁ・・・ 部長、ペンギンって泳ぐの早いですね」
「うん、そうだね」

けれど僕が見ていたのはペンギンではなく、無意識に僕の腕に抱きついてきている夕鈴だった。そして夕鈴は僕から離れると、水槽のガラスにそっと手を置いて中をじっくりと見ていた。
水槽のガラスに手が置かれる瞬間、泳いでいたペンギンが夕鈴の手を餌と勘違いして、手を啄ばもうとしたのか、泳ぎを止めて夕鈴の指の辺りを一生懸命くちばしでパクパクさせていた。

「部長、可愛いです!」

はしゃぎながら水槽に置く手を上下左右に動かす君の方が子供みたいで可愛いよと言えば、子供じゃないですなんて言って頬を少し膨らませて拗ねる夕鈴が目に浮かんできた。

「うん、可愛いね」

当たり障りの無い返答をして今度は階段を上がり、屋外に行く。季節は秋で海は水族館のすぐ隣、夕日が落ちかけている外は風が強くふいていた。

「寒くない?」

無言で再び僕の腕に抱きついてきて「こうすれば寒くないです」なんて言われると、どう返答していいのか分からない。

屋外はさっきの水槽の上の部分でかなり広いスペースに無数のペンギンが岩場のようなスペースに飼育されている。
中には数羽で寄り添っていたり一生懸命歩いていたりするペンギンたちがいて、そんなペンギンたちに夕鈴が釘付けになるのは予想通りだけれど、夢中になれば僕から離れてしまう夕鈴を見るとペンギンに少しだけ嫉妬してしまった。

ペンギンを存分に堪能したらそこで水族館は終了。出口に行き、ふと入場券を買った時のスペースをちらりと見ると、水族館に入った時最初に見た大水槽の中にいた一番大きな魚の等身大パネルがあった。そのパネルには大きな魚が尾ひれを下にして描かれていて、その魚の隣には身長が測れるようなメモリが記入されていた。

「あれ、あんなの最初からあった?」
「ありましたよ?」
「気づかなかった。背比べやってみようよ?」

そのパネルに描かれている魚と僕が背くらべをすると、僕の身長は上を向くその魚の顔の真ん中くらいまで。
次は夕鈴。夕鈴の身長は魚の鰓のあたりの部分までだった。

「んもう、分かってはいましたけれど、部長と身長差がありすぎですっ!」
「こればかりはどうしようもないなー?」
「うぅ~」
「夕鈴は、僕より身長が小さくて嫌なの?」

「・・・・。 ・・・です。」
「ん?」
「部長に私からキス・・・出来ないです・・・。」

「「・・・・・・・。」」

「いいよ、その時は僕が夕鈴の近くに行くから」

そう言いながら夕鈴に口付けを送ってみたけれど、人が多い所で何をするのかと怒られてしまった。赤い顔の夕鈴を抱きしめながら囁く

「それに夕鈴が本当に僕にキスしたい時は、僕のネクタイを引っ張ってまで強引にするでしょ?」

抱きしめて離れる寸前、耳元でそう囁いてみると更に顔を赤くする夕鈴がいた。そんな夕鈴の肩を抱きながら夕日が落ちて暗くなり始めた公園に戻るために歩く。ふと後ろを向くと水族館の出入り口になっていた透明の半円のドームはその骨組みを強調するかのように照らされていた。


「さあ、次は観覧車に乗ろう?」




怒りの矛先



※戦闘シーンあります。

【二次現創作SS】【バイト妃原作より】【黎翔×夕鈴】


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赤い飴 8.5



【二次元創作SS】【黎翔×夕鈴】【本物夫婦】

if設定:夕鈴は何処かの国の皇女です。

-*-*-*-*-*

「本当はそんな口実無くても君を迎えてあげたかったんだけれど、心の準備って必要でしょ? お互い。で、君は何も覚えてない?」

「王族に生まれた以上は望んではいけない事なのかもしれないけれど、普通に恋をして生きてみたかったです」

そういうと僕に抱きつく夕鈴の手に力が入る。

「その相手は僕じゃ無いの?」
「陛下こそ、忘れましたか? あの約束」
「忘れてないよ。そのために僕は今まで必死になっていたんだから―――」



それは昔僕が辺境に送られ幾つかの時が経ったとき、今まで放置されていたのに急に近隣諸国の会合に同行せよと言われて同行して行ったときの話

*-*-*-


会場に到着してこの部屋で待機していろと言われて珍しく大人しくしていた。
ここは他の王族も来ている、何気ない些細な事が戦争になりかねない

でも少しならいいかと思ってこっそり部屋を抜け出した。

奥深い森の中にあった建物を背に歩き始めると川についた。季節は秋、葉が色を変え始めるこの季節は少し冷たい風を運んでくるけれど、特に気にせず川のほとりに腰を落として横になった。
横になっていると誰かの気配がしたから思わず身構える。周囲を確認すれば籠を持った女の子達が赤い木の実を収穫している所でそれならと特に気にせずに横になり続けた。

「どうしたの? ここで寝ていると風邪引くよ?」

急に声をかけられて吃驚して声のした方向を見ると、さっき赤い木の実を摘んでいた子が僕の傍にきて顔を覗き込んでいた。

「どうもしないよ? ただここで横になるのが気持ちよかったんだ」

でも風邪を引くからそろそろ起きた方がいいよ? そう心配そうな表情をしつつ笑う女の子は可愛い。
風になびく髪の手入れのよさや服装、遠くに控えているように居る女性を見ると少し身分がある子に見える

「君は何をしていたの?」
「私? 私はねこの赤い実を摘んでいたの。よかったら一つ食べてみる?」

持っていた籠をぐっと指し出し、また笑うその女の子の笑顔がまぶしい
けれどこれを食べて大丈夫だろうかと少し疑ってしまう。でも差し出された物を食べないのも・・・なんて思って一つだけその赤い実を貰った

女の子は籠一杯に入っていたその実を僕が一つ摘んだのを見届けて自分も一つ実を食べていた。それを見て僕も実を一口齧ると、口の中には酸っぱい味が一杯に広がる。

「このままだと私はあまり好きじゃないけど、周りに飴を掛けると美味しいの」

その後は実の活用方法や込められた言葉をずっと女の子から説明された。普段なら一方的に説明されるのは好きじゃ無いけれど、その女の子が言うならと相槌をうんうんと打つ。
その説明が終わりかけになると、女の子の付き人だろうか、遠くに控えていた女性が「そろそろお時間です」と制した。

「ごめんね、私はもう行かなくちゃ! 明日また会える?」
「・・・確約は出来ないけれど多分会えると思う」
「じゃあまた明日ね! 約束!」

約束か・・・ 僕が居る世界では約束なんてあって無いような物
さて戻るか・・・


 次の日も用意された部屋に待機していろと言われて退屈な時間をすごしていた。自分は何のためにここに連れてこられたのか少し分からないでもないけれど、誰かに利用されるのは正直嫌だった。
でもそんな思いとは裏腹に、自分の足は自然と昨日の川のほとりに向かう。川に到着すると昨日の女の子が小さな包みを持って川のほとりに座っていた。
僕に気が付くと昨日のあの笑顔を僕に向けてくれた

「こんにちは、時間の約束をしていなかったからずっとここでまっていたの」

何時も笑顔のこの子は、どうして僕にそんな笑顔を向けてくれるんだろうと思いながらもこっちも精一杯の笑顔で返す

「僕のこと、ずっと待っていてくれたの?」
「うん、昨日言ったこれを食べてもらいたくて」

そう言って包みの中を見せてくれると昨日の赤い実が何個か一列に串に刺さって、飴がかけられている物が何本も入っていた。
一つ、僕に手渡してくれると女の子は僕の目の前でその飴を食べた。

「おいしいよ?」
「うん・・・、頂きます・・・」

促されて僕もその飴を食べてみると昨日とはまた違う味がして美味しかった。
そのまま他愛のない話をしてまたあの約束をする時間がやってくる。

「明日もまた会える?」

少し悲しそうな表情で言われるけれど、明日は帰国の日

「ごめんね、多分もう会えない。明日には帰らなければいけないから」

それにこれ以上居心地のいい女の子の傍にいたら、帰れなくなる。だからその女の子とある一定以上の距離を取る為に後ろに一歩下がった。そんな僕に手を差し出して追いかけてこようとし、転びそうになる女の子を慌てて受け止めた。その瞬間に舞う香りと感触に心を奪われる

「大丈夫?」
「ご、ごめんなさい」
「ごめんね、これ以上は無理。帰らなきゃ」

そう言って後ろを向いて歩き出した僕は、近隣諸国の王族との会合の為に用意されていた会場の中にある自分の為に用意されたという部屋に戻ってきてずっと考え事をしていた。
転びそうになった所を助けたとき、腕の中にすっぽりと入ったあの女の子の体は僕と比べてとても小さく思えた。
あの女の子、名前を聞くのを忘れてしまったけれど、できればまた会いたい。
でも今日の夜は宴、その後は帰国。帰国したらもう多分会えない。あの笑顔が欲しい・・・。
あんな笑顔を無邪気に僕に向けてくれる人は始めて・・・。

そんな事を考えていたら宴の時間になっていた。夜の宴の会場、最後だからと僕も宴の会場にいた。
周りの大人たちの表情の裏にある思惑は何かと思いながら過ごす宴、周りを見渡すと見かけないはずの姿があった。そこから僕に注がれる視線を感じ取り、宴をそっと抜け出して誰も居ない廊下から庭を眺めていたら視線の主がやってきた。

「やあ今晩は、また会えたね」

視線の主に僕は声を掛けた。すると、また会えたと昼間の笑顔を僕に向けてきた。
特にお互いなにも言われなかったけれど、この国の王族の席にこの女の子はいたし、僕は僕でそういう席に座っていたからお互い何も言わない。
そのあと時間がゆるすかぎり、他愛のない話をしてまた約束をする

「ねえ、また会える?」

時間がきてその場を立ち去ろうとするその女の子の手を行かないでと言う代わりに握りながらそう言った。
多分この会合に僕が連れてこられたのは、どうでもいい皇子のこの僕とこの子を会わせるため。
大人の汚い裏事情通りになるのは嫌だったけれど、今回だけはその通りになるのも悪くないかと思った。

「私・・・ 赤い飴を見て、あなたの事を思い出すね」
「うん・・・ 僕は何を見て君の事を思い出そうかな?」

「約束しよ? また会おうって」

精一杯背伸びをして僕が握っていなかった方の手の人差し指を立て、その指を僕の唇の上に置かれながらそんな事を言われて思わずクスリと笑った

「また会おうね」

そこで時間切れ。名残惜しくその子の手を放し、その場を立ち去った方向をずっと見つめた。そしてその後は会える機会もなく、帰国の途についた。

*-*-*-

 四阿の中、僕に抱きついたままの夕鈴と昔話をしていた。
「その時からです、赤い飴が好きになったの」
「嬉しいなー 覚えていてくれたなんて」
「性格が違いすぎて同一人物だと分かるのに時間がかかりました。」
「この性格をいきなり出すと君が混乱すると思ってさ。他の人に出す訳にいかないから2人きりの時にこの性格少しずつ出して僕の事覚えているか試していたんだけれど、覚えてないみたいだったからさー。本気で傷ついたよー。」
「・・・ごめんなさい。でも早くその事を言わなかった陛下も悪いです」

そんな話をしていたら、後処理が終わった李順が四阿にくる

「陛下、捕らえた者が全員牢に揃いましたので取調べを・・・」
「あぁ・・・」
夕鈴を四阿の椅子に一人で座らせて「またね?」と額にキスを送り、瞬時に赤くなる夕鈴を置いて牢に向かった
最後に残した言葉には青くなっていたけれど・・・。

「陛下・・・ もしかして・・・」
「財政難の件、お前からばれたぞ?」

青い顔の李順を見るのは少し楽しい。

「シラを切り通せばよろしいのに」
「いつかはばれる事だ」

冬になったらあの赤い飴をまた夕鈴に送ろう、僕も久しぶりに食べたい。
夕鈴は恋をして生きてみたかったって言っていたけれど、僕も相手が夕鈴なら恋をしながら生きてみたい。
王族として生まれても、あの赤い飴に使われている実に込められた言葉通りに生きていいのなら、今まで夕鈴が大人になるまで待ちながら君を手に入れようと必死になっていた過去なんて、きっとすぐにどうでもよくなる。


*-*-*-*-

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拍手コメントお礼

終わらないと思っていた2013年がいつの間にか終わった。
そんな訳で私にとって、怒涛の1月スタートです~。



11/07 14:39 名無しの読み手様
コメントありがとうございます♪ 表面上は8話で終わりですが・・・
実はあと1話あります(´∀`*)ウフフ
明日更新しますので、少々お待ちください♪


12/13 10:10 せつ様
お返事が遅くなってすみませんm(_ _)m
のんびりホッコリしたお話でしたか? ありがとうございます。
大好き、その一言が皆さんから聞きたくて書いています。
今はこの話とはまったく似ても似つかない話を書いておりますがそちらも楽しみにしていただけるとうれしいです♪



12/23 21:43 ゆきりんご様
拍手ありがとうございます♪
えっと、全部一気にお読みになってくださったんですか?
ありがとうございます(〃ノωノ)
次の更新はまだまだ先になりそうですが、次回もお楽しみくださると嬉しいです♪



01/02 04:04 らっこ母様
拍手ありがとうございます♪
亀更新な我が家ですが、今年もヨロシクおねがいしますー♪
時系列バラバラ更新は・・・・私の得意技ですよ( ̄▽ ̄)ニヤリ


01/23 21:38 晴重様
コメントありがとうございます♪
部長さん安定感ありますか?w 裏を見るとただのへ・・・ごほごほ
今、黎翔さんもとより部長さんは兎さんをGetすべく日々ちゃくちゃくと作戦を練っております。心の片隅で応援してあげてくださいね♪


01/24 10:13 らっこ母様
コメントありがとうございます♪
部長さんは今どうやって兎を捕獲しようか日々裏で作戦を練っているようです。
その辺り書きたいんですけれどどうも筆が乗らないようで( ̄▽ ̄;)
後々その部分書けたらいいなと思っています♪


赤い飴 8



【二次元創作SS】【黎翔×夕鈴】【本物夫婦】

if設定:夕鈴は何処かの国の皇女です。

-*-*-*-*-*

 次の日離宮に残してきた兵士達が戻ってきたとの報告を受けてある人物を人気のない部屋に呼び出させていた。
部屋には僕と李順、屋根裏に浩大。目の前にいるその人物を睨みつけながら李順と退路を絶ちにらみ合う。獲物となった人物はこの後起こる出来事を想像しているのか、それとも僕から注がれる視線に脅えているのか、恐怖で体が震えているようだったけれどそんな事はどうでもよかった。

「お前か・・・ 后の食事に・・・ しかも私と一緒の時にだけ毒を入れていたのは・・・」
「そんな恐れ多い事、私しません!」
「何とでも言うがいい、今の私は周りの声が何も聞こえなくなるくらい怒っているからな――」

腰に下げている剣を抜くとカチャっと音がする。
右手で剣を持ち、軽く素振りをすると、床に座り込む侍女の表情は青くなっていく。薄暗いこの部屋にでも分かるくらいに。

僕の左側にそういえば李順がいた。このまま処分するのもいいけれど少しは楽しんでみよう。

「そうだ李順、確かこいつの家の者は今朝全員捕らえたんだったな――」
「ええそうです。陛下が昨日の夜のうちに全員捕らえろと言うので捕らえました。残るのは正妃様付きの侍女であるこの方・・・ だけです」
「だ、そうだ観念しろ・・・ それとも・・・ この場で死を望むか・・・?」

昨日狩に同行し、兵士たちと一緒に後に戻ってきたこの元侍女を王宮と到着と同時にこの部屋に呼び出した。
体を震わす夕鈴の侍女、驚いた表情を一瞬するが恐怖でこれ以上は声は出ないらしい。目だけが泳いでいる。やっとの思いで絞り出される言葉は何だろう?

「昔から陛下は妃は一人で良いと仰られていました。その一人に私の家の姫がその一人になるように昔から準備していましたのに!」
「お前の家系の娘達は浪費家で有名だろ――? そんな娘達が私の唯一なんて笑わせてくれる」
「仮にもこの国は財政難ですからね、貴方の家系の姫なんて最初から選択肢に入っていませんよ」
「正妃様が居なくなれば、私の家の姫様が陛下の妃になれるはず――!」
「ですから、貴方の家系の姫なんて選択肢にすら入りませんよ」

眼鏡を指でくいっと上に上げて腕を組む李順がやるその仕草は本気で怒っている時にやる仕草。

「で、でもあんな弱小国の皇女よりは――!」

その言葉は僕の視界を狭めてくれた。

ふうん――。

さすがに幼稚な計画を立てるだけある・・・。

「后を殺害しようと食事に盛る毒を私と一緒の時にしか毒を入れなかったのは、計画が明るみになったとき、王暗殺の濡れ衣を后に被せようとでもしたのか? 笑わせてくれる」
「本当に欲に溺れた人間は醜いですね」

この状況で平然と悪態をつける李順に対してちょっとだけ笑った。

「さてこれ以上の言い訳は牢の中でしてもらおうか――」

最後に脅えさせる為に侍女に切りかかるふりをしようと身構えた瞬間

「陛下」

僕を呼ぶ夕鈴の声が聞こえてきて、そんな馬鹿なと切りつけるのを止めた。
剣を持ったまま声がした方向を見ると団扇で半分顔を隠し、老師とともに部屋の入り口で立ち尽くす夕鈴がいて、半分しか見えなかった顔からは半分だけでも十分過ぎるほど、人を見下すような冷たい視線が放たれていて、その視線を送られているのは僕ではないと頭で分かっていても背に汗が伝う。

「先ほど陛下が陛下と一緒の食事の時だけ毒を・・・ と、仰っていましたが・・・ それは本当ですか?」
「残念ながら本当の事のじゃ」

傍に控えている老師が片手で髭を触りながら用意していたような台詞を気を抜きながらなぞる声で言っていて、この2人はこの話を何処から聞いていたんだと再び背に汗が伝った。

剣を構える僕、それを咎める事無く青い顔で見守る李順、この状況にまったく脅えないで部屋に入ってくる夕鈴。そしてそれら全てに脅えているかのように体を震わせたままの元侍女。

「陛下との食事の時にだけ、毒を入れていたのはあなたですか? 陛下が口にされる物に毒を入れていたなんて―――」

僕にも負けないくらいの冷たい声と視線。

「短い間、でしたが、お世話になりました」

ニッコリ笑う笑顔が怖くて僕自身も震える。
李順は別の意味で震えているようだ・・・ が・・・。


 あの後の処理をすべて李順達にまかせて2人で庭に来た。何時もは庭の中をあまり歩かせないようにしているけれど、今日は夕鈴の好き勝手にさせていた。
何時も遠目にしか見ない池の対岸の花畑に行きたいと言われてそこに行き、存分に花畑を堪能した所で庭の木に咲いている花を夕鈴の頭にそっと挿してみる。

「ありがとうございます・・・」

赤い顔の夕鈴は可愛いけれど、あの部屋で初めて見た夕鈴の冷たい視線は二度と見たくないかも・・・。
付かず離れずの距離を保ってする庭の散策。部屋に戻ろうと思い、抱き上げようとするけれど逃げられる。
何時も夕餉の前にする追いかけっこみたいに退路を断つ事が出来ないからなかなか捕まえられない。

「いい加減に私から逃げるのはやめにしないか?」
「嫌ですわ、私が陛下から逃げるだなんて。むしろ、陛下が私から逃げないで下さい」
「私が君からいつ逃げた? 何時も私から逃げているのは君だろ?」
「離宮で何でも答えて頂けると仰られたとき、陛下は私に嘘を付いて逃げましたよね?」
「私が君に嘘を付くとでも・・・?」
「では、私からの質問に答えていただけますか? 私、陛下にお聞きしたい事が何個かありますの」
「昨日答えただろ・・・? まだ質問があるのか・・・?」
「ええ、たっっくさんあります」

散策中のあの笑顔は何処かに行ってしまって変わりにあの時の冷たい視線を浴びせさせられる。

そのまま、誰にも会話が聞こえないような場所に移動した。


 池の上にある四阿の中、僕は椅子に座って、夕鈴は出入り口付近に立っている

「お聞きしたいことが何個か・・・ あります・・・」
夕鈴は先ほど冷たい雰囲気のまま、僕に問いかけてくるから僕もそれに応える

「何が聞きたい、我が后よ」

椅子に座りながらほお杖を付き、笑いの表情を夕鈴に向ける。
夕鈴の機嫌は庭の散策を好きなだけさせたぐらいでは直らなかったみたいだ。

「昔から妃は一人とおっしゃっていたなら、私を選んだ理由は政略結婚の他に何かありますよね?」

あの時の話は最初から聞かれていたか・・・。

「君の国が交通の要所だから」
「陛下のそんな表情の無い、淡々とした話し方、信用できませんわ」

お願いだからさ・・・ そんな人を疑う目でこっちを見るのやめてくれない?

「夕鈴はさ、僕の事信用してないの?」
出来る限りの寂しい表情を作って夕鈴を見てみると、僕の事を疑いの表情見ていた夕鈴の顔が一瞬で赤くなった。これは・・・

「李順さんが『この国は財政難』と仰っていましたけれど、財政難なのに私の国に援助があったのは何故ですか? 李順さんが仰る事は嘘かと思いましたけれど、町の人の様子を見ればそれは嘘ではないと分かります・・・」

李順のやつ・・・ 自分でばらすなと言った「あの件」を不用意とはいえ夕鈴にばらすとは・・・

その事について言うべきかどうしようか悩んでいたらいつの間にか夕鈴が僕の近くに来ていた。
手に持っていた団扇は卓の上置かれていて、何故だろうと考えている隙に夕鈴は僕の首のあたりに抱きついてきて、そのまま膝の上に乗ってきた。
これはどういう事かと目を白黒させていたら、僕の肩に顔を埋めながら

「この体勢でいる間なら何でも答えていただけるんですよね?」

なんて言われると、もう李順から言われた事なんてどうでもよくなる。

「とりあえず、財政難は本当。でも援助が縁談の口実なのは確かだよ。本当はそんな口実なくても迎えてあげたかったけれど、臣下を説得するまで結構時間かかっていてね。そしたら君の国の飢饉でしょ? 援助が一番手っ取り早い方法だったんだ」

そっと頭を撫でて、嫌がられないか試してみるけれど嫌がられない。
これでようやく夕鈴との追いかけっこも終わらせることが出来る。

「本当はそんな口実無くても君を迎えてあげたかったんだけれど、心の準備って必要でしょ? お互い。で、君は何も覚えてない?」

その後そっと耳元で囁かれる夕鈴からの言葉を聞いて、やっとかと嬉しくなった。
それは昔、お互いが子供の頃に連れられて行った近隣諸国の王族が集まった会合でした夕鈴との約束の事。
「その時からです、赤い飴が好きになったの」
陛下の瞳みたいでしたから。なんて言われて本当に嬉しくて嬉しくて抱きしめる手に力が入る
そのままその体勢で昔の話をして、今までの空白の時間を埋めていく。

「嬉しいなー 覚えていてくれたなんて」
「性格が違いすぎて同一人物だと分かるのに時間がかかりました。」
「この性格をいきなり出すと君が混乱すると思ってさ。他の人に出す訳にいかないから2人きりの時にこの性格少しずつ出して僕の事覚えているか試していたんだけれど、覚えてないみたいだったからさー。本気で傷ついたよー。」
「・・・ごめんなさい。でも早くその事を言わなかった陛下も悪いです」

ちょっと拗ねるように頬を膨らませる表情も可愛い。やっぱり夕鈴がいれば他の妃なんて居なくてもよさそうだ。長年待っていた甲斐があった。その後、隠しておけと言われた財政難の件を何故教えたのかと李順から怒られる事になったけれど、そんな事今はどうでもいい。いつかは知られるはずの事だったから。


―終わり―



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赤い飴 7

【二次元創作SS】【黎翔×夕鈴】【本物夫婦】

if設定:夕鈴は何処かの国の皇女です。

-*-*-*-*-*

野猪に襲われて体の震えが止まらなくなった。

「帰ろう。体が震えている」

輿入れの時、花嫁衣裳に着替えをするために使った離宮が狩の場所から近い所にあるから今日はこのまま離宮に泊まると伝えられた。
太陽が傾いた頃に離宮に到着して少し乱暴に陛下に湯殿まで連れてこられて一人で湯浴みをしていると、ようやく体の震えがとまった。湯からあがると離宮の人が待機していて湯上りの香油を塗ってもらった。
着物を着た所で離宮の人は何時もの侍女さんと交代。そのあと部屋に戻る。
部屋の長椅子の上には陛下が座っていて、私に気が付かないで書簡に目を通していた。
下町で助けて貰った時に気が付いたけど、よくみるとこの人って漆黒の黒い髪に赤い飴みたいな目と整った顔つき、綺麗よね・・・。なんて、ほんのちょっと、ほんのちょっとだけ思ってしまって心臓が跳ねた。


「―――どうしたの?」
「・・・なんでもありません」

貴方に見とれていました。なんて口が裂けても言えるものですか!

「そう? 何か言いたそうだったけど・・・?」
「では・・・ お聞きしたいことが何個か・・・ あります・・・」
「いいよ答えてあげる。ただし・・・ この体勢でなら・・・ ね」


陛下は立ち上がって私を軽々と抱き上げ同じ長椅子に座った。私は椅子に座る陛下の膝の上。
こ、こ、この体勢はちょっと辛い! 顔が近い! 「放して下さい!」と言ったら

「この体勢でいる間なら何でも答えてあげる・・・」

なんて言われて聞きたい事があるこっちにしてみれば大人しくこの体勢でいるしか選択肢はなくなる。恥ずかしさに耐えながらも一回深呼吸して話を切り出す。

「まず・・・ 一つ目ですけれど、どうして私があなたの正妃に選ばれたのですか?」
「・・・またそれ?」
「それに今と謁見の間の時と大分雰囲気が違うように思いますが・・・?」
「やっぱり気が付いた?」
「気が付かない方がおかしいです!!」
「まいったなー、これ李順に『ばれないように』って言われているんだけれどねー」

陛下、陛下の手が私に腰にそえられているのと、もう片方の手が私の背中とか頭とか、色々な所を撫でているのは気のせいですか!?

「さ、わ、ら、ないで下さいっっーー!!!」
「だからこの体勢でいる間なら何でも答えてあげるって・・・」
「頭とかを撫でるのは条件に入っていません!!」
「・・・昼間君を助けたんだからこれくらいのご褒美頂戴?」
「いいから早く答えてくださいっっ!」
「ま、いっか。えーとなんだっけ、君を正妃に選んだ理由・・・ だっけか―――?」

その後に「・・・んだね」何て聞こえた気がしたけれど、陛下の手が私の頬から首にかけて移動してきて、ぞっとする感触に耐えている最中だったからそれは耳に届かなかった。

「前にも言った通り、君の国が交通の要所で他国に攻め入られるとこの国が危ないから。飢饉の援助は縁談の口実」

目をそらしながら淡々と紡がれる言葉の裏には何かがある気がして「本当に本当ですか?」と言うけれど「本当」と言い切られる。

「では・・・ 今と謁見の間の時と大分雰囲気が違うのは何故ですか?」

陛下は本気で悲しそうな表情を一瞬する

「謁見の間の僕は演技。本来はこっちが素、この国は内政の建て直し中で強い王様が必要だから臣下の前ではずっとこれ。あの時は君の侍女が近くに控えていたでしょ?」

そんな表情の無いような淡々とした話し方、信用できません!

「では、他に妃が居ないのは?」
「・・・またそれ?」
「その裏表が、他の臣下にばれないように、ですか?」
「・・・うんまあそういう事に君は鋭いんだね。よくわかったよ」
「どういう事ですか!?」

私の後頭部にそっと手をあてて、陛下の肩に顔を引き寄せられた。私の顔が陛下の肩に埋もれるような体勢にさせられた。

近い! 心臓が持たないからこの体勢は勘弁して下さい!
顔をあげたくてもがいてみるけれど、私の力では陛下には勝てない。

「そろそろお腹空かない? 夕餉にしようよ」


近くにあった鈴を鳴らすと女官さんか侍女さんが来る。この体勢を見られる、そう思うと緊張で体が強張る。陛下の肩に私が顔を埋めている体勢は、夕餉の準備が終わって食事をする部屋に抱かれたまま移動してその部屋から陛下が人払いするまで続いた。

陛下が卓の椅子に座る瞬間、僅かな隙をついて拘束から逃げた。

「まあ・・・ いいけど」

また一瞬本気で悲しそうな表情をする陛下をみて胸がチクリと痛む。
卓で陛下と向かい合わせに座ると2人きりの夕餉が始まった。


 隣の部屋から夕鈴を抱いて移動して夕餉が用意されている部屋に行き、座ると一瞬の隙をつかれて逃げられた。相変わらず、すばしっこい兎だ。
 
椅子に座りながら眺め、今日もか・・・ と、内心ため息をつく
そうしていたら、想定していなかった事を言われた。

「私が淹れたのでよければ・・・ ですが、お茶を飲みませんか?」
「君、自ら淹れてくれるの? それは是非飲みたいな」
「確か先ほどの部屋にお茶の準備がしてありましたので、持ってきます・・・」

夕鈴は隣の部屋に準備されていたお茶道具一式を持ってくると器用に淹れはじめる。
どうぞと差し出されたお茶を一口飲むとなんだかほっとできた。

「お茶、淹れられるんだ」
「私の国の王宮には必要最低限しか人が居ないんです。だから何でも自分でやりました」

掃除だってした事もありましたし、料理だってしました。皇女がそんな事ってよく回りから言われましたけれど、節約の為ですから。と笑う夕鈴は何故か今まで以上に可愛く見えた。
それから飢饉の時にした畑仕事の話になって、自分で植えた作物が育っていく過程を見て楽しかった事や、畑にするために潰してしまった庭の話を聞いていたらさっき潤したはずなのにまた自分の喉が渇いている事に気が付き、渇きを潤すために淹れてもらったお茶をまた一口飲んだ
「うん、君が淹れたお茶は美味しい」と夕鈴に対して笑うとさっきまで笑っていた表情が一瞬で赤くなるのを見る事ができた。

淹れてもらったお茶を飲んで喉を潤してから、いつものように用意された料理全てに一口ずつ口を付けてみると、案の定。
一瞬で機嫌が悪くなって、ため息を付いてから人払いしていた人間を鈴で呼び、全て片付けろと支持を出す。夕鈴が吃驚した表情でこちらを見ていたけれど気にしない振りをしておいた。

「これから后と2人で先に王宮に戻る、后の準備をしろ。他の者には私から伝えておく」

料理が全て片付けられたのを見届けてから部屋を出て浩大を呼んだ

「浩大、見つかったか?」
「ばっちり“俺は”見たよ。でも証拠の確保は無理だった。」
「昼間の野猪は?」
「そっちは仲間が捕獲済み」
「とりあえず王宮に戻る、戻れ」
「何処に? お后ちゃんの警護? それとも王宮?」
「どっちにでも捉えるがいい。捉え違えたら・・・ 分かるな?」
「へいへい、警護に戻りますヨ」

王宮から連れてきた人間に一足先に戻る為の準備をさせて、準備ができると夕鈴を迎えに行った。
部屋には表情が硬い夕鈴がいて、そのまま特に声を掛けず抱きかかえると馬に乗り王宮に向かって出発する。ここから王宮まではそう遠くない。後ろには同じく馬に乗った浩大がついてくる

「あの、陛下・・・ お茶に何か問題でも?」

王宮に戻る途中、そう問いかけられたけれど今は一刻も早く王宮に戻るのが先決だと思って

「・・・馬に揺られながら話すと舌を噛むかもしれない。その話はまた後で・・・」

夕鈴の耳元でそう囁き、頷くのを確認してから馬の速度を速める。


 狩をしていた森の近くの離宮から王宮に到着したのは夜も更けた頃だった。王宮について吃驚した兵士や女官に迎えられたけれど、そんな事をいちいち気にしている暇はない。

夕鈴を彼女の部屋へ連れて行き、不在の間に何か仕掛けられていないか確認するけれど、特に何も異常は見つからない。これで予想していた事が予想では無くなってしまい、舌打ちをする。
行われている事の陰湿さにイライラする。王宮はこういう場所だという事は昔から知っていたけれど、本気でこういう場所が嫌になってきた。

何時も夕鈴と2人の夕餉の時、念のために確認すると毒が入っている。毒見をすり抜けて毒が料理に入っていると言う事は、料理が出される直前に入れられているという意味で、夕鈴の部屋には限られた人物しか入れないようにしていたはず。
始めは僕の事を嫌った夕鈴が毒を入れているのかとも思ったけれど、さっき食事の準備が終わるまで僕の膝の上から夕鈴を放さなかった時も入っていた。

一回だけ毒が入っていなかったあの時は突発的に僕と一緒の食事になったはずだから、毒の準備が間に合わなかったと考えるのが自然。
夕鈴の支持で誰かが料理に毒を入れられている可能性もあるけれど、夕鈴にこの国に王の暗殺を共謀するくらいの信頼関係を築けるほど仲の良い人間がこの短期間で出来たとは考えにくい。
それに長年夕鈴に使えていた侍女は自国に置いてきたと聞いた。その侍女と一緒なら夕鈴が支持を出して入れている可能性はゼロではないが、離宮での夕餉にも毒が混入されていて夕鈴自ら淹れたお茶にはそれが入っていなかったからこれで夕鈴自身はほぼ白

念のために浩大に聞けばあの人物がいれていたと言われ、証拠は無いが早々に動く事にした。何時まで経ってもなかなか成功しない計画に痺れを切らす時期だ。

自室に戻る途中の回廊、歩きながら考えを廻らせれば廻らせるほど、機嫌が悪くなる。その鬱憤は一足遅れて王宮に付いた李順に向けられ、出した指示に証拠も無いのに本気ですかと問いかけられる。
当たり前だと返し、証拠なんて捕らえた後に作れと言うと李順はため息を付きつつ、こめかみを抑えながら準備をしに行ったのを確認して自室に戻った。




→ 赤い飴 8



赤い飴 6

【二次元創作SS】【黎翔×夕鈴】【本物夫婦】

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家出未遂をしてからはなかなか部屋から出られなくなった。部屋から一人で出ようとすると侍女さん達に必死に止められて、侍女さんと一緒でも部屋を出ては駄目と言われたし、人の出入りも制限されているようでここ最近は片手で数えられる人数しか他の人の顔を見ていない
朝は朝でどんなに早く目が覚めても寝所の隣の部屋には誰かがしっかりと待機しているから一人で部屋を出るのは不可能だった。
日中は昼の前後に陛下が来て一緒に庭園に行く時もあるけれど、忙しいのか陛下と散策に行く機会は少ないし、行けたとしても時間は少ない。
正直言ってもっと時間をかけて庭を歩き回りたい。でももっと一人で散歩をしたいと言えばあの鋭い視線で睨まれて何も言えなくなってしまい、その後は文句を言う暇もなく抱き上げられて部屋に連れ戻される。
陛下以外だと老師と一緒なら部屋の外に出られるけれど、庭には行けない。だから外に出たい、庭をもっともっと散策したいという気持ちは不満となって私の中に溜まっていく。そんな日が何回か続いたある日、ある話を持ちかけられた。

「ねえ、君は国内を見てみたいんだよね?」
「はい見てみたいです」
「この前見せに連れて行ってあげるって約束したしね、今度連れて行ってあげるよ。・・・少しだけれどね」
「・・・少し、ですか?」
「うん、今度王宮の外に出かける用事があるからその時一緒に来れば少し見られると思うよ」


そんな会話があった数日後、私は陛下の狩に同行する事になり馬車に揺られていた。
今日は一人で馬車に乗っていて、衣装も何時もより動きやすい服でちょっとだけ安心する。
道中、輿入れの時に見られなかった風景を見られる・・・ と思ったけれど、今回も警備の為だからと外を見ることはできなくて、陛下の嘘つき。なんて呟くけれど誰もそれに応えてくれる人はいなかった。
一人で馬車に乗っていたのはほんの数刻、森に程近い草原で馬車は止まった。
馬車が止まっても声を掛けられなかったから、そのままの馬車の中で待機していたら急に馬車の扉を開けられて、開いた扉からはまぶしい太陽の光が入ってきて目がくらむ。その後目に入ってきたのは武装した服装の陛下だった。
左の手の甲が半分くらい隠れる小手を付けた左手を差し出されてその手を取りながら馬車を降りる。そのまま手を繋ぎながら用意されていた椅子まで連れて来られて座るように促され、その椅子に座ると大きな傘を持って日除けを作ってくれる人が傍に立つ。その傘のおかげで少し強い太陽の日差しが特に気にならなくなった。

狩は私が待機している場所を中心にして何人もの兵士さん達とともに始まった。
陛下の「始め!」という合図に、待機している場所の回りを囲んでいた兵士が左右に展開しながら移動していく。その間に陛下の所には目隠しを付けられた一匹の鷹が運ばれてきて、小手を付けた左手に鷹が止まると目隠しを取った鷹が陛下の手から「いけ!」という合図で飛び立つ。
鷹は指笛を合図に辺りを旋回しながら飛びまわる。高い場所を飛んでいたかと思えば、指笛で急に高度を下げて森の木の擦れ擦れを飛び、音色が違う陛下の指笛を合図にまた高い場所を飛ぶ。森の中ではさっき左右に展開していった兵士さん達が動き回っていて、陛下は弓矢を持って馬にまたがり、森に近い場所で走る馬に乗ったまま弦を引っ張って矢を打っている。

陛下から私までは距離がある場所にいるはずなのに、陛下が獲物を狙う一瞬の殺気が私の所まで伝わってきた。

木に矢が刺さる音や陛下が場所を移動するために馬を走らせる音。兵士さん達が動き回る音が辺りに響き渡る森。
その森を見渡せる位置に私がいる場所。そこには狩の以外に周辺に咲いている花とか空、警備兵や身分の高そうな貴族の人とか、他に見るべき物や見ておくべき物はいっぱいあったけれど、その中から私は何故かただ一つ、陛下から目が放せなくなっていた。
手に持っていた団扇で半分顔を隠しながら視線は陛下を追いかける。鷹が陛下の腕にとまって合図でまた空に飛び立ち、指笛の支持通りに動く。そんなのをじっと見ていると私の傍に居る人から何か言われても反応する事ができない。
何度も「お后様?」と周りの人たちから声を掛けられていた気がするけれどそんな声は耳に届かない。
ずっと夢中で陛下を目線で追っていた。ふと我に返って私は今何をしていたのと頭を左右に振る。そんな私を見てそばに控えていた侍女さんに再度「お后様?」と声をかけられて、私はやっと現実に戻ってこられた。


 一通りの狩から戻ってきた陛下とその場で簡単な軽食を取るために一時休憩になる。休憩が終わると陛下からまた「始め!」という声があたり一帯に響き渡って午後の狩が始まる。
私は午前中のようにまた椅子に座って陛下の動きを目線だけで追っていたら侍女さんから「近くに花畑がありますのでお待ちの間、そちらに足を伸ばしてみては?」と声を掛けられ、せっかくだから森周辺の風景も見てみたいと思って侍女さんと2人で花畑まで足を運んだ。

花畑は森の直ぐ隣にかなり広い範囲で広がっていて、色とりどりの花が風に揺れて、その風に乗って良い香りもしてくる。
思わずため息が付きながら花畑に見とれていた。

「お后様、少しお持ち帰りになってお部屋に飾られますか?」
「そうですね、そうしましょう」
「では少々準備をして参ります。お待ちくださいませ」

準備をしに侍女さんは戻って行ってしまった。

一人で花畑に足を踏み入れて、甘い花の香りを楽しみながら地面に座って花を摘み始める。
部屋の何処に飾ったら綺麗になるか考えながら色彩を考え、香りを楽しみながら花を束にする。

そういえばこの前王宮の庭を陛下と歩いた時に王宮の庭園にも花が咲き乱れている場所があるのを見つけた。池の対岸に咲き乱れる花達と、池の上にある四阿、全てが絵になっていた。
その風景がとても綺麗で、思わず足を止めて眺めていたら戻ろうと言われてそのまま部屋に連れ戻されたんだっけ・・・。
多分侍女さん達に言えばその花を私の部屋まで持ってきてくれる。それに王宮の庭には他に花もいっぱい咲いていた。だから私が摘んでいる花は必要無いとか少し思うれど、自分で花を摘むのは嫌いじゃないから夢中になっていくつか花を摘んで花束を作っていた。

「できた・・・」

出来上がった花束の全体を眺め再度香りを楽しむ。この花束を部屋の何処に活けようか考えながら立ち上がろうとした瞬間、草木を倒す音と、何かがこちらに向かって突進してくる音が耳に届いた――


音がする方向に視線を移すと、強い太陽の光と野猪が私に向かって突進してきているのが目に入ってきた。足がすくんでしまっていたからその場で慌てて体を傾けると、突進してきた野猪を辛うじて避けることができて一瞬だけほっとする。
けれど、野猪は方向転換してまたこっちに向かってきた。頭を守るような体勢をして目をギュッと瞑りながら迫り来る気配をさっして体を気配とは逆の方向に傾ける。それを何度も繰り返してなんとか野猪から避ける事ができていたけれど、野猪は何度も何度も方向転換をして私に向かってくる

目を瞑っている最中、もう駄目自分ではこの状況をどうにもする事ができない!

もう駄目って思ったから脳裏に昔の事が走馬灯のように浮かび上がってきて、もうこれ以上避けられない、次は絶対に私に野猪が衝突する。そんな覚悟をして再度目をギュッと瞑りながら身構えていたら

バシッと言う音があたりに鳴り響く。
そのバシッという音で思い出したのは走っている馬の背に乗って矢を打っていた陛下の姿。
どうしてそんな事を今思い出すんだろう。

そんな事思い出す必要ないのに!!
このままだと走ってくる野猪が私に衝突する。

動けない!

怖い!!

お願い、誰か助けて!

そう願った瞬間、花畑にはまたバシッと言う音が何回も鳴り響き、その後何かが軟らかいものに刺さるような音がすると同時に フゴッ フゴッ という鳴き声が私の耳に届いてきた。
そしてこの後伝わると思った衝撃がなかった。

恐る恐る目を開けると同時に、下町で不良に絡まれた時に聞こえた「夕鈴!」という叫び声のような声が耳に届いた。

「へ、へいか!」
「何故一人でいる!? 警備兵と侍女はどうした!」
「ご・・・ ごめんなさい!」

抱き上げられたからそのまま抱きついてみると、それに答えるように私に回されている手に力が入る。
少しだけ気持ちが落ち着いたからおそるおそる周辺を見渡してみると、地面に横たわる野猪に何本かの矢と小刀が刺さっていた。
自分達が立っている少し離れた所に陛下が持っていた弓がほおり投げられていたから、たぶん私を助けようと陛下が矢で野猪を仕留めてくれたんだと思う。

さっきの恐怖で震える続ける体を陛下に抱かれながら何とか落ち着けようとしていると、花を摘む準備をしていた侍女さんがやっと戻ってきて、私を一人にした理由を陛下が侍女さんに問い詰めていたような気がした。
けれど、体が震えてそれを落ち着けようと必死だったから詳しくは覚えていない。
侍女さんへの問い詰めが終わった陛下は私の顔を無理やり自分の方に向けさせて、何か私に対して何か言っていたような気がしたけれど、何も答えられなかった。

やがて痺れを切らした陛下は私を抱えたまま馬に乗って走りだした。

「帰ろう。体が震えている」



→ 赤い飴7



赤い飴 5

【二次元創作SS】【黎翔×夕鈴】【本物夫婦】

if設定:夕鈴は何処かの国の皇女です。

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 王宮から抜け出して当てもなく歩いていたら人が沢山行きかう大きな門があった。特に咎められることなく、その門をくぐると貴族の家が立ち並んでいたそれまでの区域とはまったく違う光景が広がっていた。

町中の大きな通りには沢山の屋台が立ち並んでいて、その回りにいる人たちは思い思いの格好で軽食を食べている。この国の人達は朝餉を家で作らないで外で食べる習慣があるのかもしれない。でも王宮からここまで結構距離があったっし、すでに太陽が高くなっていたから時間はすでに昼餉なのかも。

大通りを歩きながら屋台で出されている物を遠巻きに見て赤い飴がないか探してみる。でも季節が違うからか目的の物は見つからなくて、美味しそうに屋台の物を食べている人を見ているとお腹が空いてくる。
そういえばここに来てから夕餉を食べないで眠る日々が続いていて、食べようと思うけれど狼陛下に睨まれての食事は食欲がわかないし、なにより陛下が一つ一つの料理に一口手をつけると、私が手をつける前に全て下げてしまうから。
その後軽食と言って他に作られた物を差し出されるけれど、あの陛下の顔を見た後はとてもじゃないけれど食欲が出てこない。だから何も食べずに眠る日が続いていて昨日もそうだったから今はお腹が空いていた。
でも今はお金を持ってきていないから屋台は見るだけ。屋台が沢山立ち並ぶ通りは正直言って目に毒だけれど、何も持っていない自分が悪い。屋台を見ないように歩こう・・・
そんな事を思いながらトボトボ歩いていたら、ふいに今まで気が付かなかった違和感がある事に気が付く。ここは結構大きい通りで人も多いけれど、建物と建物の間の細い路地には人の気配がしない。
たまに人がいてもそれはすでに酒に酔っている人が笑いながらお酒を飲んでいる光景だけ。普通の町の人もあまりいい着物を着ていないからおかしいと違和感を持った。
その後は一人で黙々と通りを歩いていたらふと、後をつけられている気がして、その気配から逃げようと路地裏に入った。

路地裏に入ると太陽が高い位置にあるはずなのに光は建物に遮られているのか薄暗くて、冷え切った空気が漂っているだけ。何となくその場にいるだけで背筋が震える。
早く路地裏から抜け出そうとして早足で歩いてもう少しで大通りに出るという時に不意に手首を掴まれた。

「へへ、一人でこんな所にいる女を見つけるなんて俺達運がいいな」
「本当ですね兄貴」

私の手首を掴んでいた人はお酒の臭いを漂わせた人達。
その人たちを見ながら思っていた事はどんな国にも、昼間からお酒を飲んで女の人に手を出すという人がいるという事
暫く手首を掴まれたままにらみ合いをしていたら、向こうから何か言ってきた。

「気が強そうな女だな・・・ でも着ている服は上物だ、珍しい毛色をしていないけれど着物だけでも相当高く売れるぜ」
「そうですね兄貴。顔もなかなか可愛いし高く売れそうです」

もしかして、もしかしなくても私、今本当にまずい状況よね・・・。

「やめて!」

そう叫んだ瞬間「夕鈴!」と叫び声のような声が聞こえ、同時に何かが飛んできて私の手首を握っていた男の腕に何かが刺さる音がした。

「うわぁ!!」

男が怯んだ隙にその場から逃げようとするけれど、足がもつれてしまってその場に膝から座り込む。
何がおきたのか状況を判断できるようになる頃、目に入ってきたのは腹を抱えながら倒れている私の手首を掴まえていた男の人、それに変な帽子を被った少し小さい人がもう一人の男の人の喉元に刃を当てていた。

「ふん、貴様らよっぽど命が惜しくないようだな・・・」

路地裏の空気より冷たい空気と声が伝わってくる。

「ちょっとでも動いたら抵抗の意思ありと見てこれ突き刺すからネ?」
こっちは軽い声だけれど、大分物騒な事を言っている・・・。

・・・押さえつけられている2人組みの不良よりもっと怖い人達が・・・。というか何でここが分かったの!?

呆然とする私を置去りにして物事はどんどんすすむ。腕を刺された人はお腹を蹴られたらしく、動けないでうずくまっていてもう一人はいつの間にか後ろ手に縛られている。

「浩大、あとはまかせた」陛下のさっきよりも冷たい空気と声が路地裏に響き渡り、そのまま私を抱かえて路地裏から出て行った。

その後は抱えられたままの状態で馬に乗って王宮に連れて行かれて、着いた先は後宮の立ち入り禁止区域だった。

「ひとまず湯浴みをしてこれに着替えて」
そう言われて置いていかれた老師の部屋に程近い小さな湯殿、后用の大きい湯殿よりよっぽど落ち着く。一通り体を洗って出ると、準備されていた妃衣装に着替えて老師の部屋に行く。
そこには不機嫌な陛下が椅子に座っていて何となく「すみません・・・ お先にいただきました」なんて言ってみた。

「ここで待っているように」

不機嫌な表情と声、怒らせた・・・。老師と少し話をしながら髪を乾かして整えながら陛下を待っている時に老師との話の流れでどうして他に妃がいないのか老師に聞いている途中で陛下が湯殿から出てきた。
服装は下町でいた時とは違う服装。それを見て少しだけ心臓が跳ねた。

その後は陛下に抱えられるようにして部屋に戻ると心配していた侍女さんに迎えられる

「陛下! お后様も無事のお戻りなによりでございます」

顔を少し下げて挙手しながら侍女さんは礼をとった。

「今戻った。后は一人で後宮の立ち入り禁止区域に迷い込んだだけだ。心配をかけた」
「怪我が無くてよろしゅうございました」
「后は今朝、朝餉を取っていない。すぐに昼餉の準備をするように」

昼餉の準備が終わるのを陛下の膝の上で見守ることになった。

侍女さん達に聞こえないように声を低くして会話をする

「・・・・・・私はなぜ陛下の膝の上に居るのでしょうか?」
「君が兎みたいに跳ねて私から逃げてしまうからしかたない」
「逃げませんから降ろしてください・・・ 人目があって恥ずかしいです・・・」
「なら好都合、人目があるなら君は暴れない」

私を拘束する腕にちょっとだけ力が入った

「もう逃げませんから放してください」
「だからここで君を放すと仲良し夫婦の演技ができない」
「そんな演技する必要ありませんからっっー!」

食事の支度が出来ると陛下はまたさっさと人払いをしてしまう。誰かに見つめられながらの食事は好きじゃないから正直ありがたい。
向かい合わせに卓に座ると、陛下はまた何時ものように一皿一皿何かを確認するようにして一口ずつ食べて、私に声を掛けてきた。

「お腹空いているでしょ? 食べて?」

何時もの怒ったような冷たい口調じゃなかったから、それにちょっとだけ安心するとお腹が空いていたことを思い出した。

「いただきます――」

一口料理を食べてその後はどんどん料理を口に入れた。全体的に料理が冷めているが残念だったけれど、こんな豪華な料理、残すのもったいないし。

食事が半分くらい進んだ所でまた会話が始まった。

「ねえ、美味しい?」
「はい・・・ 美味しいです・・・」
「そう。所で君は一人で何処に行こうとしていたの?」

何となく目の前に座る人が違う人のような気がしたけれど、話は続く

「この国に来て大分時間が経ちました。でも王都を、この国の民の人たちや風景を見た事がありませんでしたので、見て見たかったです」

貴方から逃げましたなんて言えない。

「なら今度見せに連れていってあげるよ。でも暫くは僕と一緒じゃないと部屋の外に出るのは禁止ね。庭園の散歩も一緒の時だけ・・・ 分かった?」

卓に肘をついて手の平の上に顎を置く格好をしながらにっこり笑顔で笑われると「はい」としか言えなくなった。

「じゃあこの件はこれで終わり。今日は戻ってこられないかもしれないけれど、明日も来るから――」
椅子から立ち上がって私の頭をそっと撫でながら優しい声をかけられてもやっぱり「はい・・・」としか言えなくなる。

「残りはゆっくり食べてね?」そんな言葉を残されて部屋に一人になった。



→ 赤い飴6

赤い飴 4


【二次元創作SS】【黎翔×夕鈴】【本物夫婦】

if設定:夕鈴は何処かの国の皇女です。

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 朝何時ものように朝議を終えて政務室で書類に目を通して署名をする、繰り返された退屈な毎日が今日も始まっていた。でも最近は夜に最近捕まえた兎の部屋に通うという楽しみがある。でも兎は狼に大分脅えているようでいつも逃げられてしまう。昨日の夜は狼に脅え、放してと暴れだした兎を何とか静めたけれど、朝目覚めて何をされたか自覚されるとまた怖がられ、逃げられると思うとため息が何度も出てきた。

「陛下、またため息ですか?」
「うるさい」

筆を指でくるくる回しながら書類に目を通していた。

「陛下墨が飛びますからおやめください」
「筆に墨なんて付けてない」

それに今、政務室は人払いをして居るのは李順と2人だけ。多少気を抜くのは許される

「署名されていなかったんですか!?」
「署名する書類が無かったからだ、これ全部差し戻せ」
「まったく、相変わらず機嫌が悪いようですね」
「ふん、分かっているなら聞くな。それとアノ件はどうなっている?」
「今は泳がせていますが、毎回なんて懲りませんね」
「まったくだな」

ため息をつきつつ、イライラしながら次の書類に目を通そうと手をかけると、とある報告が飛び込んでくる

「陛下、お后様がお部屋にいらっしゃいません!」

「なに!?」

夕鈴付きの侍女があわてて報告にやってきた。
報告を聞いてあわてて立ち上がり、李順と夕鈴の部屋に行く。寝台は綺麗に整えられてその上に夜着も綺麗に畳まれて置かれていた。特に乱れた部分争った痕跡がなく、状況からして攫われたりしたのではなく、自分の意思で居なくなった事がわかり思わず舌打ちをする。

「陛下、昨日のあれはおいたが過ぎたんじゃない? そりゃ逃げ出したくもなるよ」

暫く夕鈴の国に密偵に行かせていて、夕鈴を迎えると同時に警護に付かせた浩大が顔をだす。

「陛下、一応お聞きしますが昨日の夜、何をされたのですか・・・?」
「夕鈴の質問に答えただけだ」
「それだけであんな事、普通はしねーヨ?」

浩大は自分の首の後ろを軽く叩きながら悪態をつく
自分が不味いと思った行動を後から言われると機嫌が悪くなる材料にしかならなかった。

「夕鈴はいま何処にいる?」
「さー、何処だろうネ? でもそろそろ後をつけさせたヤツから報告がくるかな。・・・連れ戻すの?」
「あたりまえです! 昨日立后したばかりの正妃が家出なんてありえませんよ!! 陛下いったいどういう事ですか!」
「狼陛下で脅えさせすぎたんじゃねーの?」
「2人ともうるさい・・・」
「”うるさい”じゃありません! いったい何をされたんですか!? まさかアノ件、お話になった訳ではありませんよね!?」
「・・・まだ話してない」
「取りあえず女官には緘口令をしきましょう。その間に陛下と浩大は捜索をお願いします。陛下、正妃様には絶対にアノ件、知られる訳には行きませんよ。おわかりですか?」
「ああ、分かっている」

またため息を一つき、腰に剣をさげて早足で王宮の回廊を歩く。

「しっかし陛下いったい何したの? 地理もなにも知らない女の子が一人で出て行くなんてよっぽどの事じゃネ?」
「うるさい、まだ家出だと決まった訳じゃないだろ?」

睨んでみるけれど、こいつはそれくらいじゃ怯まない事は最初から分かっていた。

「いや、どう考えても家出だから。昨日屋根裏から見ていたけどさー、あれじゃ完全に嫌われたよね。その結果がこれでしょ?」

やっぱり昨日のあれを見ていたのか・・・ 分かっていて言っているな・・・

「浩大お前は死にたいか?」
「いや、まだ俺は死にたくないヨ。所でこの後どうやってあの子との関係修復するつもり?」

すると浩大の所に一羽の鳩がやってきて、肩に止まる。足につけている筒から手紙を取り出して中身を確認しているが内容を報告されるまでの僅かな時間が長く感じて早く内容を教えろという気持ちが口に出た。

「さっさと報告しろ」
「へいへい、仲間の報告だとすでに下町に行っちゃったみたい。馬は通用口に用意してあるヨ」
「ふん、私から逃げるとは浅はかな事をする兎だ。さっそく兎を狩に出発するか・・・」
「だからそれが脅えられる原因じゃねーノ?」
「うるさい」

そう再度言うと、衣を変えて馬で下町に向かった。


 下町に付いて辺りを見渡す。この広い下町あの兎をどうやって探そうかと思うと頭が痛くなる。夕鈴の髪の色はそう珍しい色ではないから髪の色だけで判断するのは森の中で木の葉を捜すのに等しい。いつものあの二つに結ったお団子の髪形を今日もしているとは限らない。せめてどんな格好をしているのか分かれば多少は見つけやすくなるけれど、妃衣装のままで王宮の外に出るほど考え無しではないだろう。
しかし手がかりが無ければ町中を馬で走る事になる。ここでむやみに馬を走らせるに少々目立ちすぎる。
再度イライラしながら浩大に何処に居ると聞いてみれば「いや、俺が追いかけているわけじゃないし」と言われて追いかけているヤツは何処だと聞いてみれば「だから次の報告が来るまでわからねーから」と返される。
何とか気持ちを落ち着かせながら馬を走らせ、町中を歩いている人の髪色を選別しながら探していれば目の隅から入ってくる町の光景は夕鈴に見せたくなかった光景ばかりが広がっていた。

昨日言ったあの言葉通りの子であればこの町並みを表す意味には気づかれないはずだけれど、事前に調べた報告通りならばきっとその言葉通りの子では無い事は明らかで、でも気が付かれる前に見つけられればいいと淡い期待をしながら馬を走らせる。

大通りを馬で走って見るけれど、一向に見つかる気配はない。唇を噛みながら浩大に路地裏を探すように支持を出し、一刻ほど馬を走らせていれば細い路地から「やめて!」と聞きなれた叫び声が聞こえて来た。


→ 赤い飴5


赤い飴 3


【二次元創作SS】【黎翔×夕鈴】【本物夫婦】【大人風味】

if設定:夕鈴は何処かの国の皇女です。

-*-*-*-*-*

立后式が終わった夜の日私の部屋に来ていた陛下に、ふと疑問になっていた事を何時ものように一定の距離を保ちながら聞いてみる。

「どうして、貴方の正妃に私なんかが選ばれたのですか――?」
「・・・・・・どういう事?」
「国に居たとき、陛下の所には縁談が星の数ほど寄せられていると聞きました。他国の援助が必要なほどの弱小国の皇女である私よりも、もっと強国の皇女とか、国内のしかるべき家の子女を迎え入れるとか・・・ 選択肢は一杯あったはずです。その中から私を選んだ理由はなんですか?」

椅子に座っていた陛下はゆっくり立ち上がると、怒った顔をしながらゆっくり、ゆっくりと私に近づいてきた。今まで保っていた距離を確保しようと迫られる速度にあわせて後退する。けれど、やがて逃げる場所がなくなってしまう。背中が壁に付いてしまってこの後どうしようかと思っていると陛下の手が私の顔のすぐ横、左側の壁に置かれた。これ以上は逃げられない。

「私が君を正妃に選んだ理由が知りたいの・・・ か・・・?」

手を壁に置いてから陛下の視線が上下に動いていたから、私の事を舐め回すように見ていたのかもしれない

「はい、知りたいです」
「わざわざその理由を言わなくても分かると思ったが・・・ 所詮は箱入りか・・・」
「なっ――!」
「どうして他に妃が居ないと思う――?」

ここ数日、王宮や後宮内を隠し通路を覚えるためとか言われて歩き回っていたけれど、他の妃に会う事は無かった。
その理由はこういう事だと思っていたから

「正式な式が執り行われる前に、妃の数の多さに怯んだ私が逃げ出さないよう他の妃と隔離されているものだと」
「――・・・そんな事をするのなら、貴族の子女とのお茶会すらさせないな」

何回かこの国の有力貴族の子女とお茶会をしてきた。中にはこんな人が正妃? という嫌味の視線と言葉を浴びせる人もいて、風に乗って「私達の方が綺麗よ」とか「皇女だからって選ばれたのよ。いい気な物ね」そんな言葉が運ばれてきていた。

「では何故、他の妃が居ないのですか?」
「君以外の女なんて目に入らない」
「今は私を口説いている場合じゃありませんよね?」

陛下の事を思い切り、顎を引きながら、でも精一杯に上目使いで睨みながら言っていたら顎を掴まれ上を向かされる

「君は今日、なんの儀を受けた? 夫が妻に愛の言葉を囁くのは当然だろう?」
「論点がずれていませんか? 私は何故、他に妃がいないかとお聞きしています」
「他の妃が居たほうが君はよかった――?」

急に陛下の表情と纏う空気が変わったような気がしたけれど、それは勘違いだったみたで、また私を言葉で追い詰めてくる。

「そ、そういう事では――」
「なら教えてあげるよ、君を選んだ理由」

そうして急に抱き上げられて目を白黒させていたら寝台に運ばれた。
この後、どういう事が起こるかは用意に想像できる、国で受けてきたお后教育には閨に関する部分も少し、本当に少しだけあった
寝台に寝かされて、陛下の体が私の動きを封じるかのように乗ってきて、おまけに両手が頭の上で纏められるように押さえつけられる。

「君を選んだ理由は――」

少しの沈黙の後、陛下の言葉が続いた

「君の国は何故、先年飢饉が起こった?」
「それは、日照りが続いて・・・」
「それだけじゃない、君の国は山が多いだろう?」

確かに昔、王宮周辺の色々な山に家族で登ったことがある。

「君の国は国土の大半を山が占める。その地形を利用し、かつ容易にたどりつけず、全体を見渡せる場所に王宮はある。だから王宮に行くまで時間がかかる。確か君の国の王宮からこの国の国境に来るまで3日・・・」
「そうです、確かに3日かかりました」

自国の道中は山道が多くて中々馬車を進める事が出来なかった。

「山の多さで作物を育てる面積があまり無い、それが飢饉のもう一つの理由。それに他の国が白陽国に攻め入るためには君の国を必ず通らなければならない」
「―――え?」
「君の国が周辺諸国に攻め入られると、この国も危ういからな―― だから君が白陽国に嫁ぐ事はこの国に十分に利がある」

陛下の空いている手は私の頬を、唇を、首筋をゆっくりと滑っていった

「君の国は交通の要所、何らかの小さな理由で内政が揺らぐと攻め入られる理由になる。この国が後ろ立てになる事によって多少の内乱が起こっても周辺諸国からは守られる。一応この国の事は他の国も怖いらしい。それに君の国にただ援助しただけじゃもったいないからね、君に嫁いできてもらったよ」

私の両手を纏めている手によりいっそう力が入ってきた。

「そんな事も知らなかったなんて・・・ 所詮は君も他の貴族と同じ箱入り娘だったか・・・?」

私を見下ろしながら自分の唇を拭いて注がれる赤い瞳の冷たい言葉。

「そしてどんな理由で君が選ばれたとしても君はもう私の后、君はこの後宮で私の唯一の花としてただ優雅に咲いていればいい、君がいれば他の妃をと進めてくる輩もそうそう出てこないだろうしな」

「箱入り娘」その一言がどうしても許せなかった。

暴れて陛下が少し怯んだ隙に纏められていた両手を自由にさせて、自由になった両手で思いっきり陛下の胸を押すと、抵抗されるとは思っていなかったのか陛下の体が後ろに飛んだ

いつの間にか乱された襟を元に戻して思いっきり睨みつけながら大声で

「どうせ私は箱入りですよ! 私を選んだ理由が、そんな、そんな理由だったなんて・・・ 大っ嫌い!」
「何とでも思うがいい。ただ君はもう私の后、逃げ道は無い。それにその理由は多少予想できただろ?」

確かに政略結婚だとは予想はついていたけれど、私の国との国力の差を見せ付けらると同時に、その冷たい言葉で私を選らんだのは国益のためだったという裏が明るみになって、私の心に大きな傷が付く

広い寝台の上、狼と例えられるほどの冷たい人から逃げながら願ってもいけない事をどうしても願ってしまう。王族の政略結婚はよくある話だけれど、それでも普通に恋をして生きてみたかったという事を。


再び陛下の腕の中に捕らえられて放して、放さないと押し問答が始まる。腕の中で暴れていたら首の辺りが急に痛くて目の前が暗くなった。


 朝、寝台の上で目がさめると時間はまだ夜があけ切ったばかりで侍女さん達も居ないみたいで、今を逃したら次こんな機会に恵まれるか分からないから今の内にと思って持ってきた私物を入れていた箱からある物を取り出し、それを身に着けて何時ものように髪を結うと隠し通路に入る。

馬車でここから私の国の王宮まで5日くらい、歩けば10日くらいできっと付くはずだから歩こう。昔、家族で色々な山に登ったし、山に行かなくなっても自国の王宮の中を毎日歩き回っていた。だから歩いて帰るのは不可能じゃないと思った。

絶対に家に帰ってやる! それにここに来るとき見れなかった白陽国の国内が見られるから楽しみ。
そんな事を思いながらこっそり朝日に照らされる王宮を抜け出した。


→ 赤い飴4


赤い飴 2

【二次元創作SS】【黎翔×夕鈴】

if設定:夕鈴は何処かの国の皇女です。

-*-*-*-*-*

「・・・表をあげよ」

謁見の間に広がる冷たい空気よりも冷たく感じる声が響き渡る。少し間をおいて頭の重さに耐えながら軽く自己紹介をしてから頭を上げると、玉座には赤い瞳の人が座っていた。

玉座に座る赤い眼をしたその人が噂に聞く冷酷非情の狼陛下かと思うと少し冷や汗が背を伝うけれど、今は他の人の目があるから表情を崩す訳にはいかない。

「ふうん・・・ 美しいな。流石我が妻になる兎・・・ と言う所か?」
「お褒めいただきありがとうございます。これからよろしくお願い致します」
「堅苦しい挨拶はいい・・・」
「先年の飢饉の時、私の国への援助、大変感謝しております」
「・・・・・・。」
「そして私に沢山の贈り物を贈っていただきまして、そちらも大変嬉しく思います」

再び床に手をつき、頭を下げる。正直言ってあの赤い眼から鋭い、睨まれるような視線を送られると心臓が持たないし、一言、一言陛下から何かを言われるたびに緊張が走る。だから少しでも恐怖から逃げようとした結果がもたらした行動だった。

「堅苦しい挨拶は言いと言っただろ? 聞こえなかったか?」
「・・・・・・。」
「ま、いい折角私の元に飛び込んできた愛らしい兎だ。存分に楽しませてもらおう」
「・・・・・・。」
「これから私は他の謁見があるからな、直ぐには君の元に行けないがそれまではゆっくりと長旅の疲れを癒すといい」
「はい、お気遣いありがとうございます」

ため息が一つ聞こえたような気がしたけれどそれは誰から出たため息かは分からない。
さっきと同じ足音と衣擦れの音だけが部屋に響き渡ると「お部屋へご案内いたします」という言葉を合図に頭を上げると、謁見の間にはいつの間にか私と侍女さんしか居なくなっていた。とりあえず一仕事終了ね・・・。


「陛下、脅えさせてどうするのですか」
陛下がどうしてもと回りを説得して娶った妃が到着したのは今し方。彼女は謁見の間で平静を保っているようには見えたけれど完全に脅えていた。

「愛らしい兎が狼の巣に飛び込んできたな」
謁見の間の近くにある待機するための部屋で陛下はクククと笑っていた。
「とりあえず彼女には暫くの間あの件、ばれないようにしてくださいよ?」

「うん、分かっているよ」
早速止めろと言っている事を笑いながらやってのけるこの人に少しだけ怒りが沸いてきた。


 謁見の間を出てこれから私の部屋になるという場所まで移動するけれど、そこまでの道のりがまた大変だった。もう謁見は終わったのだから早くこの重い衣装を脱がせてください!
やっとの思いでこれから私の部屋になるという場所に到着すると、豪華な調度品に出迎えられた。
到着早々、この重すぎる衣装を少しは動きやすい服をにかえて、髪を整える。お茶を侍女さんに淹れてもらって一口飲むと、出されたお茶が今まで飲んだことのないような高級なお茶という事が分かって思わずため息が出る。

「お口に合いませんでしたか?」
「いいえ、とても美味しいです。」

笑顔を作って受け答えをするけれど、正直他国に援助が出来るくらいお金持ちの国って羨ましい・・・。

その後、後宮での管理人だという老師に挨拶をしたり持ってきた荷物を確認したりする。一つだけ持ってきた私の私物を入れた箱はちゃんと部屋に届けられていたから安心した。荷物の確認が済んでから部屋の窓から庭を眺めてみた。綺麗な庭園が広がっていて広さもかなりあるみたいで、またため息が出てしまう。今度部屋から見える庭園の池の上にある四阿に行って見たいなとおもった。
そんな事を考えながらまたお茶を飲んでいると、さっきの管理人という老師がまたきて、連れられて王族しか知らない抜け道を教えてもらっていたら、いつの間にか時間がかなり過ぎていって、夕餉の時間になっていた。
部屋には夕餉が2人分、陛下と一緒に食べるという事が一目瞭然で、気が付かれない程度にため息をついてみると

「お疲れですか? 本日ここに到着したばかりですから本日は早めにお休みになってください」
なんて侍女さんから声を掛けられてしまって「いえ大丈夫ですよ」と微笑を返した。すると急に声を掛けられて吃驚する

「ふうん・・・ 君はそういう表情もするのか・・・」
「陛下!?」

いつの間に!? という言葉を何とか飲み込んでいたら、陛下は無言で人払いをして部屋に2人きりになる。

「いつか私に対しても微笑んで欲しいものだ・・・」

立ち尽くす私の前に移動してきて、クイッと顎を上に向けられた。
予想外の行動にパニックになって思わず部屋の隅に逃げる

「私から逃げられるとでも?」
「思っていませんっ」

それから部屋の中を怖い人から逃げ回っていたら痺れを切らしたあの人から声を掛けられる

「――いい加減夕餉にしないか? 我が后よ」
「ええ、そろそろ夕餉をいただきたいです」
「卓につかないのか?」
「陛下がお先にお座りください」

それから陛下はまだ怒ったような表情で私を睨みつけ、ため息を付いてから卓に座った。私もそれを確認すると卓の反対に置かれていた椅子に座った。
陛下が夕餉に一口箸をつけてから話を始める。

「いつまでそうやっているつもり?」
「何のことか分かりません」
「別にいいけど、夕餉食べないの?」
「後で頂きます」
「ま、この僕に牙を剥くのも可愛い」

陛下は卓の上にある鈴を鳴らして女官を呼び、片付けるように命じて片付けるのを見届けると
「后には湯浴みのあと軽食を準備するように」と言って部屋を出て行った。

 それがこの国に到着した日の話。それから立后式までの日々は日中この王宮についての勉強をしてみたり貴族の子女という人たちとのお茶会をしてみたりして、夜は陛下から一定の距離を取りながらの夕餉を取ろうとするけれど、目の前の人が怖くて食べられない。するとさっさと陛下が料理を下げてそれとともに陛下も戻っていく。
陛下のお渡りがあると初めは平然と出迎え、人払いがなされると私は陛下から逃げる。
そんな私を陛下が追いかけて、やがて向こうが折れて夕餉を取り、陛下は部屋に戻る。そんな日々が続いた。

再びあの衣装の重さに耐える日が来た。永遠とも思える重さに耐える一日と、この国の大臣達を始めてみて、大臣同士とか、貴族同士とかのいざこざがこの国にもありそうなんて思いながら過ぎた一日。式が終わった日の夜、私の部屋に来ていた陛下に、ふと疑問になっていた事を一定の距離を保ちながら聞いてみる。

「どうして、貴方の正妃に私なんかが選ばれたのですか――?」


→ 赤い飴3



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