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埋ける



【二次創作SS】【黎翔×夕鈴】【本物夫婦】
・ほんのちょっとオリキャラいらっしゃいます

-*-*-*-*-*

 陛下が視察に出て半月くらい。当初1週間くらいという予定が延びに延びていた。
たまにどうしても今すぐ許可が欲しいと言われて政務を代行する時もあるけれど、それらが来るたびに許可していいのかどうか普段陛下がやっている政務の裏を取ってから判を押すから一件、一件時間がかかる。
案件がもたらせられる度にため息をつきながら他の書簡と照らし合わせ、陛下はこの全ての事柄が頭に入っているのかと思い、凄いと思うと同時にこれじゃ逃げ出したくなるのがよく分かってきた。
今回の視察は李順さんと浩大も陛下に付いていったし、今は臨時の時みたいに陛下が居ないからと言ってふらりと下町に戻れる立場じゃない事は十分過ぎるほど分かっている。
夜は早めに湯浴みをして政務に関する書簡を読んで寝るという日常が幾度と無く繰り返された。

ある日、珍しく予定が特に無くて書簡の決済も求められなかったし天気もよかったから何か作って侍女さん達とお茶でもしようと思って久しぶりにお菓子を作っていた。
何を作ろうか悩んだけれど、自然と手は動き出す。材料を準備し終わって、さて作ろうという時になって声を掛けられて、厨房に居るときは人を近づけないように人払いしてあるから声を掛けてくるのはよっぽどの事があったのかと思って吃驚していると、挙手をしたままの石英さんから「陛下がもうすぐ王宮にお戻りになるそうです」と言われて、思わず準備し終わった材料とか、暖めた油の事とか何もかもすっかり忘れて衣装の上に着ていた前掛けを慌てて脱いで石英さんに手渡す

「石英さん、御影さん後はよろしくお願いします!」

なんとか近くに置いてあった領巾だけは肩にかけて衣装の裾を持ち上げて、普段扱いに困っている領巾も気にならないくらいに夢中で走った。すれ違う官吏の人たちや女官さんが吃驚していた気がする。それに、後ろから私付きの侍女さん達が慌てて追いかけてきている気がしたけれど今はそんなことどうでもよかった。


妃が走るなんてとんでもない!


走っている最中、李順さんに何度も言われたその言葉が頭の中をよぎる。けれどこの廊下の先の王宮の玄関、あそこには待ち望んだ瞳が、声が、姿があると思うと走らずにはいられなかった。


必死に走ってたどり着いた王宮の庭、到着すると丁度王宮に付いて馬から下りた陛下がそこにいた。

「陛下!」

領巾が風に舞って腕から落ちたけれど、何も考えずに到着したばかりの陛下に飛びつく。
いきなり現れて、飛びついた私を陛下は少し驚いた表情をしながら受け止めてくれた。

「今戻った。」
「陛下、お帰りなさいませ、寂しかったです・・・」

最後の言葉は陛下にしか聞こえないようにそっと囁くように言ってみた。一緒に居られなかった空白の時間を埋めるかのようにギュッと抱きつくと陛下もそれに答えるかのように抱きしめ返してくれる。回りの官吏の人たちとか、武官の人たちの視線も気にしないで抱きしめ合っていると李順さんから咳払いが聞こえてきた。

「コッホン、正妃さまお久しぶりでございます。お変わりはありませんでしたか?」

その言葉に我に返るけれど今は陛下から離れたくなかった。陛下に抱きついたまま、后の表情で受け答えをする。

「はい、おかげさまで変わりはありません。ただ私が代行した政務が何件かありましたので後ほどご報告いたします」
「では陛下、お疲れのところ申し訳ありませんが早速政務室へお願いできますか?」

李順さんの一言を聞いて「少し休ませろ」なんてため息を付きながら陛下は私を抱いたまま執務室に向かって歩き出した。向かう途中に陛下と少し会話をしてギュッと抱きつくと背中をそっとさすってくれた。
政務室に付いたら官吏の人たちに驚いたような視線に出迎えられたけれど、陛下が私を抱いて政務室に行くのは日常の光景。特に何も言われずに膝の上に乗ったまま代行した政務の事を報告する。
報告が終わるとすでに空が赤く染まっていて、ふと作りかけのお菓子の事を思い出した。そっと膝の上から降りて先に部屋に戻っていますと言い、ぎこちない口付けを陛下の頬に送ってから後ろを見ないで逃げるように部屋に戻った。
部屋に戻ると湯浴みへと促されるけれど、その前にと言って昼間の厨房に戻った。厨房に戻ると浩大がいて「特に問題はないネ」なんてにっこり笑っていた。

「ごめんね、陛下に付いて行って戻ってきたばかりなのに到着早々見張りなんかさせて、疲れたでしょ?」
「ん、俺には道具があるからそうでもないヨ?」
ニヤリと笑う浩大の傍に感じるもう一つの影の気配。特に気にしないで中途半端になっていたお菓子作りを再開することにした。

夜の闇が迫る夕暮れ、借りた小さな厨房で作るお菓子は揚げ団子。よく粉をこねて生地を作り、餡を中に包み込んで回りに胡麻をまぶして少しぬるめの油でじっくり揚げる。油の中で泳ぐお団子が狐色になって一つ一つ箸で掴んで紙の上に乗せて油を切る。全部作り終わって油きりの為のお皿一杯になって甘い香りを厨房いっぱいに漂わせていた。その香りに誘われるようにやってきたさっきまで屋根の上に居た2人に陛下に内緒って付け加えて入りきらなかったお団子を渡して、部屋に戻った。

部屋に戻るとまだ陛下は部屋に戻っていなかったし、湯浴みを進められたから冷めないうちに陛下に揚げ団子を食べてもらおうと思って石英さんに届けるようにお願いをする。湯浴みをして部屋に戻ると夕餉になるけれど、陛下は忙しくて戻ってこられないみたいだった。
夕餉を取ってから何時ものように書簡を読んでいると夜遅くに陛下が部屋に戻ってくる。
戻ってきた陛下は湯浴みの後のようで衣装は夜着、表情は少し疲れていたからそのまま寝台に行ってぐっすり眠るように促してみた


「陛下、お疲れでしょう? 湯浴みもお済みのようですし今日はもう眠られては?」
「うーん、確かに疲れたけれどね、君は無理していない?」
「何が、でしょうか?」
「夕鈴が僕に対して敬語になるときは少し我慢している事がある時でしょ? 何を我慢しているの?」

思わず袖で顔を隠すと、ふわりと抱きしめられる。

「さ、何をして欲しいの? この前見たいに口付け?」

私の髪をそっとすくって口付けを落として毛先を指でクルクル回して遊びながら分かっている事を私から聞き出そうとする陛下は意地悪だと思う

「それも欲しいですけ・・・」

いい終わらないうちに口付けが降ってきて、思わず足に入っていた力が抜けた。

「欲しいけど?」
「あの・・・」
「うん?」
「今は陛下にゆっくり休んでほしいです・・・」

力が抜けて立っていられなくなった私を抱きとめながら本当にそれだけ? なんて聞かれるけれど、それだけですと返事をした。
少し、不満げな顔をして陛下は寝台に向かう。寝台の傍に立って掛布にもぐりこむ陛下を見届けると、部屋の明かりを落として寝台の帳を落とした。落とした帳の間から見えるのは横向きになって「ん」っと一言言って腕を広げる陛下。
どうしようか少し迷っていると「ここじゃ不満?」と不適な笑みを浮かべながら首をかしげて私を見つめてきた。

もちろん不満があるわけ無いからそっと隣に、陛下の傍に行くとぐっと腕を引っ張られて腕の中にいともたやすく囚われる事になる。そして私を捕らえる腕に少しだけ力が込められるのを感じると思わず笑みがこぼれた。

囚われたお返しに陛下の背に腕を回してぎゅっと抱きしめて、胸に顔を摺り寄せてみた。その行動は特に咎められる事はなく、逆に私を抱きしめる腕にもう少しだけ力が入ってきた。
そのままの体勢で合えなかった間の事をお互い報告して、私が喋っている間、陛下は何も言わずに私の頭を撫でながら話を聞いてくれて、お菓子のお礼と政務室でのお返しなんていいながら顔の全体に口付けを贈ってくれた
私もそのお返しって言って陛下の髪や手に口付けを送ると笑いながら頭を撫でてくれて、そのまま撫でられながら話を続けていると段々頭の上をすべる手の動きが止まって気持ちよさそうな寝息が聞こえて来た。

私の話の途中で寝るなんて、何て思うけれどそれだけ疲れているという事だからそのまま私も眠ることにした。陛下の腕を枕にして眠るのは私のちょっとした意地悪。お仕事だけれど私を王宮に置いていったし、その間よく眠れなかったからこれくらいの事は許されるかな?

私も昼間作った揚げ団子の餡みたいにずっと陛下に包み込まれていたい気分。そんな私の我侭を何も言わないでも陛下は聞いてくれる。

今日も陛下の胸に顔を埋めて眠る。眠りに落ちる瞬間、遠くで幸せな音色が聞こえてきた。









SNSでいただいた

「本物夫婦でひたすら陛下に甘える夕鈴と夕鈴を甘やかす陛下を!」を元に書いたお話です


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fuyu 様へ


夫婦設定は素直に甘える夕鈴が書けて楽しいのです(´∀`*)ウフフ
御影さんとの距離は着実に着実に短くなっていくでしょうねー
そうしないと護衛の意味がありませんからw
ではでは
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