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赤い飴 6

【二次元創作SS】【黎翔×夕鈴】【本物夫婦】

if設定:夕鈴は何処かの国の皇女です。

-*-*-*-*-*

家出未遂をしてからはなかなか部屋から出られなくなった。部屋から一人で出ようとすると侍女さん達に必死に止められて、侍女さんと一緒でも部屋を出ては駄目と言われたし、人の出入りも制限されているようでここ最近は片手で数えられる人数しか他の人の顔を見ていない
朝は朝でどんなに早く目が覚めても寝所の隣の部屋には誰かがしっかりと待機しているから一人で部屋を出るのは不可能だった。
日中は昼の前後に陛下が来て一緒に庭園に行く時もあるけれど、忙しいのか陛下と散策に行く機会は少ないし、行けたとしても時間は少ない。
正直言ってもっと時間をかけて庭を歩き回りたい。でももっと一人で散歩をしたいと言えばあの鋭い視線で睨まれて何も言えなくなってしまい、その後は文句を言う暇もなく抱き上げられて部屋に連れ戻される。
陛下以外だと老師と一緒なら部屋の外に出られるけれど、庭には行けない。だから外に出たい、庭をもっともっと散策したいという気持ちは不満となって私の中に溜まっていく。そんな日が何回か続いたある日、ある話を持ちかけられた。

「ねえ、君は国内を見てみたいんだよね?」
「はい見てみたいです」
「この前見せに連れて行ってあげるって約束したしね、今度連れて行ってあげるよ。・・・少しだけれどね」
「・・・少し、ですか?」
「うん、今度王宮の外に出かける用事があるからその時一緒に来れば少し見られると思うよ」


そんな会話があった数日後、私は陛下の狩に同行する事になり馬車に揺られていた。
今日は一人で馬車に乗っていて、衣装も何時もより動きやすい服でちょっとだけ安心する。
道中、輿入れの時に見られなかった風景を見られる・・・ と思ったけれど、今回も警備の為だからと外を見ることはできなくて、陛下の嘘つき。なんて呟くけれど誰もそれに応えてくれる人はいなかった。
一人で馬車に乗っていたのはほんの数刻、森に程近い草原で馬車は止まった。
馬車が止まっても声を掛けられなかったから、そのままの馬車の中で待機していたら急に馬車の扉を開けられて、開いた扉からはまぶしい太陽の光が入ってきて目がくらむ。その後目に入ってきたのは武装した服装の陛下だった。
左の手の甲が半分くらい隠れる小手を付けた左手を差し出されてその手を取りながら馬車を降りる。そのまま手を繋ぎながら用意されていた椅子まで連れて来られて座るように促され、その椅子に座ると大きな傘を持って日除けを作ってくれる人が傍に立つ。その傘のおかげで少し強い太陽の日差しが特に気にならなくなった。

狩は私が待機している場所を中心にして何人もの兵士さん達とともに始まった。
陛下の「始め!」という合図に、待機している場所の回りを囲んでいた兵士が左右に展開しながら移動していく。その間に陛下の所には目隠しを付けられた一匹の鷹が運ばれてきて、小手を付けた左手に鷹が止まると目隠しを取った鷹が陛下の手から「いけ!」という合図で飛び立つ。
鷹は指笛を合図に辺りを旋回しながら飛びまわる。高い場所を飛んでいたかと思えば、指笛で急に高度を下げて森の木の擦れ擦れを飛び、音色が違う陛下の指笛を合図にまた高い場所を飛ぶ。森の中ではさっき左右に展開していった兵士さん達が動き回っていて、陛下は弓矢を持って馬にまたがり、森に近い場所で走る馬に乗ったまま弦を引っ張って矢を打っている。

陛下から私までは距離がある場所にいるはずなのに、陛下が獲物を狙う一瞬の殺気が私の所まで伝わってきた。

木に矢が刺さる音や陛下が場所を移動するために馬を走らせる音。兵士さん達が動き回る音が辺りに響き渡る森。
その森を見渡せる位置に私がいる場所。そこには狩の以外に周辺に咲いている花とか空、警備兵や身分の高そうな貴族の人とか、他に見るべき物や見ておくべき物はいっぱいあったけれど、その中から私は何故かただ一つ、陛下から目が放せなくなっていた。
手に持っていた団扇で半分顔を隠しながら視線は陛下を追いかける。鷹が陛下の腕にとまって合図でまた空に飛び立ち、指笛の支持通りに動く。そんなのをじっと見ていると私の傍に居る人から何か言われても反応する事ができない。
何度も「お后様?」と周りの人たちから声を掛けられていた気がするけれどそんな声は耳に届かない。
ずっと夢中で陛下を目線で追っていた。ふと我に返って私は今何をしていたのと頭を左右に振る。そんな私を見てそばに控えていた侍女さんに再度「お后様?」と声をかけられて、私はやっと現実に戻ってこられた。


 一通りの狩から戻ってきた陛下とその場で簡単な軽食を取るために一時休憩になる。休憩が終わると陛下からまた「始め!」という声があたり一帯に響き渡って午後の狩が始まる。
私は午前中のようにまた椅子に座って陛下の動きを目線だけで追っていたら侍女さんから「近くに花畑がありますのでお待ちの間、そちらに足を伸ばしてみては?」と声を掛けられ、せっかくだから森周辺の風景も見てみたいと思って侍女さんと2人で花畑まで足を運んだ。

花畑は森の直ぐ隣にかなり広い範囲で広がっていて、色とりどりの花が風に揺れて、その風に乗って良い香りもしてくる。
思わずため息が付きながら花畑に見とれていた。

「お后様、少しお持ち帰りになってお部屋に飾られますか?」
「そうですね、そうしましょう」
「では少々準備をして参ります。お待ちくださいませ」

準備をしに侍女さんは戻って行ってしまった。

一人で花畑に足を踏み入れて、甘い花の香りを楽しみながら地面に座って花を摘み始める。
部屋の何処に飾ったら綺麗になるか考えながら色彩を考え、香りを楽しみながら花を束にする。

そういえばこの前王宮の庭を陛下と歩いた時に王宮の庭園にも花が咲き乱れている場所があるのを見つけた。池の対岸に咲き乱れる花達と、池の上にある四阿、全てが絵になっていた。
その風景がとても綺麗で、思わず足を止めて眺めていたら戻ろうと言われてそのまま部屋に連れ戻されたんだっけ・・・。
多分侍女さん達に言えばその花を私の部屋まで持ってきてくれる。それに王宮の庭には他に花もいっぱい咲いていた。だから私が摘んでいる花は必要無いとか少し思うれど、自分で花を摘むのは嫌いじゃないから夢中になっていくつか花を摘んで花束を作っていた。

「できた・・・」

出来上がった花束の全体を眺め再度香りを楽しむ。この花束を部屋の何処に活けようか考えながら立ち上がろうとした瞬間、草木を倒す音と、何かがこちらに向かって突進してくる音が耳に届いた――


音がする方向に視線を移すと、強い太陽の光と野猪が私に向かって突進してきているのが目に入ってきた。足がすくんでしまっていたからその場で慌てて体を傾けると、突進してきた野猪を辛うじて避けることができて一瞬だけほっとする。
けれど、野猪は方向転換してまたこっちに向かってきた。頭を守るような体勢をして目をギュッと瞑りながら迫り来る気配をさっして体を気配とは逆の方向に傾ける。それを何度も繰り返してなんとか野猪から避ける事ができていたけれど、野猪は何度も何度も方向転換をして私に向かってくる

目を瞑っている最中、もう駄目自分ではこの状況をどうにもする事ができない!

もう駄目って思ったから脳裏に昔の事が走馬灯のように浮かび上がってきて、もうこれ以上避けられない、次は絶対に私に野猪が衝突する。そんな覚悟をして再度目をギュッと瞑りながら身構えていたら

バシッと言う音があたりに鳴り響く。
そのバシッという音で思い出したのは走っている馬の背に乗って矢を打っていた陛下の姿。
どうしてそんな事を今思い出すんだろう。

そんな事思い出す必要ないのに!!
このままだと走ってくる野猪が私に衝突する。

動けない!

怖い!!

お願い、誰か助けて!

そう願った瞬間、花畑にはまたバシッと言う音が何回も鳴り響き、その後何かが軟らかいものに刺さるような音がすると同時に フゴッ フゴッ という鳴き声が私の耳に届いてきた。
そしてこの後伝わると思った衝撃がなかった。

恐る恐る目を開けると同時に、下町で不良に絡まれた時に聞こえた「夕鈴!」という叫び声のような声が耳に届いた。

「へ、へいか!」
「何故一人でいる!? 警備兵と侍女はどうした!」
「ご・・・ ごめんなさい!」

抱き上げられたからそのまま抱きついてみると、それに答えるように私に回されている手に力が入る。
少しだけ気持ちが落ち着いたからおそるおそる周辺を見渡してみると、地面に横たわる野猪に何本かの矢と小刀が刺さっていた。
自分達が立っている少し離れた所に陛下が持っていた弓がほおり投げられていたから、たぶん私を助けようと陛下が矢で野猪を仕留めてくれたんだと思う。

さっきの恐怖で震える続ける体を陛下に抱かれながら何とか落ち着けようとしていると、花を摘む準備をしていた侍女さんがやっと戻ってきて、私を一人にした理由を陛下が侍女さんに問い詰めていたような気がした。
けれど、体が震えてそれを落ち着けようと必死だったから詳しくは覚えていない。
侍女さんへの問い詰めが終わった陛下は私の顔を無理やり自分の方に向けさせて、何か私に対して何か言っていたような気がしたけれど、何も答えられなかった。

やがて痺れを切らした陛下は私を抱えたまま馬に乗って走りだした。

「帰ろう。体が震えている」



→ 赤い飴7



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