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惑わす光 -前編-



【二次現創作SS】【バイト妃原作寄り】【黎翔×夕鈴】
・血の表現がありますので苦手な方はバックしてください。

-*-*-*-*-*

政務室、机を叩くコツコツという音だけが響く室内には机に座る青年
その青年の傍にいる髪を後ろに結った青年は座っている青年に冷たい視線で睨まれ動けないのか、動じていないのかは分からないが室内には机に座る青年が指で小刻みに机をたたく音だけが響いていた。

「私がそれを容認するとでも――?」
「されないでしょうね」
「なら何故聞く? なぜそれを実行しようとする?」
「それも彼女の仕事内容のうちの一つですから」

それはそうだと机に座る青年は心の中で思うが彼女にそのような危ない事はさせたくなかった。

「黒幕が分からない以上はどうする事もできません。これが一番早い方法です」
「・・・いくらお前の考えでもその案は却下だ。他の方法を考えろ」


冷たくそう言い放ち、政務室を出て行く青年の向かう場所はただひとつ。

「人選を失敗しましたかね」
髪を纏めた青年のため息は冷たい室内の空気の中に溶けていった。


 今かなり機嫌が悪いのが自分でも分かる。夕鈴を囮に? それが夕鈴の仕事? 確かに偽の妃を雇うときはそういう内容で契約するとは聞いていた。
契約が何だ。借金が何だ。今些細な事でも何かあったら自分を抑えられない。だからこの黒い自分を何とかしてくれる人の所へ足早に向かった。

「陛下、お帰りなさいませ」
何時もの部屋で何時ものように優雅なお辞儀をして僕に礼を取る夕鈴
そこにいるのは演技をしている偽の夕鈴だけれど、それでも顔をみられただけで僕の気持ちが落ち着いていく

「我が妃よ、今戻った」

そっと夕鈴に抱きつくと、体を強張らせながら小さく「ひっ」と言うのがおかしくて思わず心の中で笑った。
人払いをしていないから騒いでは駄目だと色々と我慢しているのだろう。
心の中で小さく微笑みながら、そっと合図を出すと侍女は音もなく部屋から出て行くけれど夕鈴がそれに気が付く様子はない。
それだけ僕が夕鈴に触れる事は夕鈴にとって嫌な事なのかと心の中で少し落胆しながらそっと声を掛けた。
「夕鈴、もう侍女は居ないよ?」
「えっ、あっ、えっと、その・・・」
顔を赤くしながらそのまま大人しく僕に抱かれたままの状態でいられる夕鈴がよく分からない。逃げたければ逃げればいいのに。勿論逃がすつもりはないけれど。腕の中にいるままの夕鈴をもう一度だけ強く抱きしめてから何時ものように抱き上げ夕鈴を膝の上に乗せ椅子に座った。

「今日は一日何をしていたの?」
「ずっと部屋に居ましたよ。そうして欲しいと仰っていたのは陛下じゃないですか・・・」

今日は浩大が地方の調査に行っているから庭の散策や掃除をやめて部屋に居るように。嫌な予感がするし政務室に行く途中の回廊で襲われるかもしれないから部屋にずっと居るようにと口うるさく言っていたのは僕自身だ。
「そうだったね。約束守ってくれたの? ありがとう」
そっとこめかみの部分にキスを贈ると夕鈴の顔が一瞬で赤くなった。
それを見て夕鈴の髪を撫でながらもう一度キスを贈ろうとすれば抗議の声が聞こえてくる
「陛下近いです! 近いですっ!」
「可愛い事する君がいけない」
夕鈴の髪の毛を少しすくって髪に口付けをしてから毛先を指に絡めてクルクル回して遊ぶ
こうして触る夕鈴の髪が日を追うごとに手触りが良くなっている。
おそらく僕が夕鈴の髪を頻繁に触っているから侍女が気を利かせて念入りに手入れをしているのだろう。
他の場所に口付けをすると夕鈴は泣いたり怒ったりして僕から逃げてしまうけれど、髪への口付けだけは僕から逃げない。太陽の光で輝く髪の色、触り心地の良さ、全てが愛しくてそこにそっとまた口付けをした。
するとまたさらに顔を赤くする夕鈴が可愛くて唇に口付けをしたくなるけれどその思いは必死にかみ殺す
ただ、その髪の触り心地が良くなる度に夕鈴が王宮に来てから経った時間の長さを思い知らされる。
「あの・・・陛下?」
「ん? なに?」
「その・・・夕餉の前に少し庭に出たいのですが・・・よろしいですか?」
「駄目!」
思わず両方の二の腕を掴み強く言う。
「は・・・ はい あの、陛下少し・・・ 痛い・・・です・・・」
「ご、ごめん」
掴んでいた部分をそっと撫でながら再度呟く
「今日の君は僕だけの物・・・ ね?」
李順が夕鈴を囮にするとか物騒な事を言っていた。同時に沸いてくる不安な気持ち、嫌な予感。
何も言わずに僕の胸にしなだれかかるその仕草を是の返事と受け取り、またそっと夕鈴の髪を撫でる。
夕餉までそのままゆっくりとした静かな時間が流れて行った。



夕鈴とのそんなやり取りがあった数刻後、庭にいる侵入者と僕は剣を交えていた。
今日夕鈴の部屋に入った時から感じていた気配をそこから遠ざけようと庭に出て警備兵はいったい何をやっているのかとため息を付きながら掃除をしていた。

黒衣を纏う刺客達が切りかかってくる。剣をふりながら裏を考えた。
刺客達は僕に対して積極的な攻撃をしてこない。防御しかしていない。
「ぐはぁ!!」
「うわぁぁ!!」
造作も無く土を付けると直ぐに動かなくなる。何人倒しても相変わらず“攻撃”をしてこない
どんなに考えても、嫌な方向にしか考えが向かない。
騒ぎをききつけた警備兵がようやく到着したと思ったとき月明かりに輝くあの髪が僅かに視界に入ってきた

大判の布に包み、まるで荷物を肩に抱えるようにそれを運んでいる賊がいた。
あわててそちらの方向に走ろうとするけれど、その場にいた刺客が僕の邪魔をする。

「じゃまだ!」
目の前に立ちはだかっていた最後の一人を切り捨てて夕鈴を助けようと走る

「夕鈴!」
「陛下!?」

懐に隠していた小刀を投げつけ動きを封じようとしたけれど、夕鈴を運んでいる賊を守るように走っていた賊の仲間がそれを庇い目標からは逃げられる。
思わず舌打ちをして全速力で走るけれどまた他の刺客が僕の前に立ちはだかる。
それを倒す僅かな合間に夕鈴を抱えた賊は王宮の壁をいとも容易く飛び越えていった。

「陛下!」

最後に聞こえた夕鈴の悲鳴のような僕を呼ぶ声だけが耳に何時までも残っていた。



 何時までも戻ってこない陛下を後宮まで迎えに行くと、いつの間にか庭園では騒ぎが起こっていた。
警備兵が倒れている黒衣の者達を一人一人連行していく中、陛下は剣を握りずっと一箇所に立ち尽くしながら壁の方向を見ている。
警備兵に事情を聞き、頭をかかえながら陛下に声を掛けると冷たい視線で射抜かれ、喉に陛下の剣を当てられる。
赤く染まったその剣は不気味に月明かりを反射していた。

「李順・・・ 許可なくあの件実行したのか・・・?」
「まさか。しかし相手にこんなに早く動かれるとは思いませんでした」

いくら戻しても同じ複数の相手から何度も何度も届けられた妃推挙の件
同時に陛下が感じていた不穏な動き。そろそろ潮時かと手を打とうと案を提案したら却下された
そして次の案を考えている最中にこの騒ぎ。

「夕鈴に何かあったら・・・ 分かるな・・・?」
冷たい視線のまま、持っていた小刀で胸のあたりを刺される。唯一の救いは陛下が刺してきた小刀は鞘に収められたままだった事
当たった所からの痛みに息をのむけれど、無かった事にして地面に落ちたその小刀を拾い陛下を追いかける。

「探せ、遅くても明日の昼までに何としてでも!」
「御意」

-*-*-*-*-*



-後編-


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