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廻る色 後編



【二次創作SS】【バイト妃原作より】【黎翔×夕鈴】

-*-*-*-*-*

湯殿で倒れてから気が付けば数日経っていた
侍医の許可が出るまで寝台から離れられず、暇をもてあました私は歌の練習をしていた。
始めて聞いたとき、曲調がとても気に入って老師に無理を言って掃除の合間に教えてもらったこの歌。久しぶりに寝台から起き上がり、窓の傍に置かれた椅子に座り庭を眺めながら歌を歌う
曲調は明るいけれど歌詞の意味を思えばとても寂しいこの曲。
歌っていたら侍女さんから声を掛けられる
「お妃様そろそろ陛下がお見えになる時間です」
「はい、分かりました」
椅子から立ち上がろうとした瞬間、陛下の声が聞こえて来た
「我が妃の声はいつ聞いても心地よいな」
「へいか!?」
「その歌、もう一度私の為だけに歌ってくれるか・・・?」
「は、はい」
「では庭に行こう」

陛下は何時ものように私を抱き上げようとしたけれど、私に触れる瞬間に一瞬戸惑ったのを見て私が寝込んでいた間に何があったのか分かってしまった。
この陛下の仕草は私に知られたく無い事があった時にしか出てこない
だから、私が椅子から立ち上がってそっと陛下に抱きついてみた
体を一瞬強張らせ、それでも私に触れない陛下にそっと呟く
「駄目・・・ですか?」
すると陛下の胸に寄せられてそのまま強い腕の力で包み込まれる。
「駄目じゃないよ。嬉しい」
自分から抱きついたのはいいけれど、この後どうしたらいいのか分かからなくてそのまま動けなくなっていると、腰に陛下の手が回されてきてもう片方の手で頭を優しく撫でてくれた。私もしがみ付く手の力を強くすると不意に抱き上げられ庭までそのまま運ばれた
たどり着いた場所は庭にある花畑。あの日、歌を歌っていた場所に向かい合わせに座る。
「聴かせて?」
ここ数日頑張って練習していた歌を陛下の為だけに心を込めて歌う。最後まで歌うと、急に陛下が立ち上がった。
「ねえ夕鈴、一緒に踊らない?」
「でも私、踊った事がありません」
「僕がリードするから大丈夫。夕鈴は僕に身を任せていればいいから」

お互いの両手を手に取りながら1、2、3のリズムで踊るその踊りは、はじめてなのに自然と体が動く。
さっきの歌とはまた違う表情をするその同じ曲調は、歌詞の表と裏を見ているようだった。
踊っている最中に笑いかけると陛下も笑い返してくれる。何気ない陛下の仕草に幸せを感じ、陛下の笑顔が送られてまた幸せを感じる。
陛下から何度も何度も幸せな贈り物をもらった気がして幸せだった。

「きゃぁ!」
「夕鈴!」

そんな事を考えながら踊っていたら、足がもつれて転んでしまった。
「ご、ごめんなさっっ!!」
慌てて起きようとしたら、それを咎められるようにして抱きしめられてしまう。
「我が妃は・・・積極的だな」
「なっっ!!!」
今の私達は陛下が仰向け、私がその上に向かい合わせで乗っている状態
「退きます、退きますから放してください!」
「い、や」
たった二文字だけれど、陛下の曲げる事のない意志が込められた言葉が私の体を動かなくさせる。
暫くそのままの体勢でいて陛下がようやく起き上がると、膝の上に乗せられている時のような格好になり、また私を抱きしめる陛下の腕の力が強くなった
「あったかい・・・」
今は春、天気がいいから日差しが暖かい
「春になりましたから暖かいですね」
「ううん、違うよ。君が暖かくて安心する。この前は氷のように冷たかった」
私の肩に顔を埋めながら陛下は搾り出すような弱々しい声
「寒いなら・・・何かお作りしましょうか?それともお茶をお淹れしますか?」
「両方って言ったら?」
「では使用許可を貰ってきますから、放してくださいっ!」
陛下の胸に手を置いて、腕を精一杯伸ばして放してくださいと抗議する
これ以上は身が持たない
そして伝わる唇への熱、逃げたくても逃げられない腕の中で何をされたのか理解すると必死に抵抗して陛下の胸を嫌という気持ちを込めて叩く。
それでも抱きしめる腕の力は弱まらず、陛下の顔も近いまま。腕の力が弱まった僅かな隙を突いて陛下から逃げた
「ば、ば、バイトで遊ばないで下さい!!!」


今日は珍しく夕鈴が自分から僕に歩み寄ってくれて、それが嬉しくて我慢しきれずに口付けを送ると逃げられてしまった。
抱きしめるように夕鈴の全てを腕の中に閉じ込めたいと思ってしまうがそれは叶わぬ願い
何もかも忘れて裏も表もなく、君の笑顔の為だけに生きて行きたいと願うのも許されない
せめて君の借金が終わるまではたとえ君にとって僕が銀を腐敗させてしまうような毒だとしても傍にいさせてほしい。
借金が終わったら時計の針を撒き戻したい。今度はこんな辛い思いさせないようにするから。
何度同じ時を廻るように繰り返したとしても、僕は君を僕の物にしたい

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