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雨 2


【二次創作SS】【黎翔×夕鈴】【現代パラレル】

・黎翔さん21歳(大学生)夕鈴17歳(高校生)の時のお話

*-*-*-*-*-*-*-


次の日の学校帰り、天気は悪くなかったけれどなんとなく公園に足を向けてみた。
そう、私があの公園に行くのは天気が悪いときだけじゃない。日常を忘れたい時。

昨日の東屋には誰もいない。椅子に座って外を見ていたけれど東屋を出て池のほとりに立ってみた。
今日は風が優しく吹いている。風になびく木の枝が重たく揺れるけれど、枝先は池の水面に付きそうで付かない

池は魚が跳ねて、鳥がゆったり泳ぐことで水面が揺れる。
綺麗な水は周りの木々を映し、曇りの空から少し顔を出した太陽の光をキラキラと反射させていた。
梅雨の晴れ間にしては日差しが眩しくて、水面に付きそうで付かない枝先が水面に触れるまで見ていたいと思っていたけれど、早々に帰宅することにした。

それから数日間、梅雨の途中なのに雨はまったく降らない。
天気予報はそろそろ梅雨明けだと言っていたし、テストも終わる。
しばらくあの公園に行く理由も無くなりそう。
テスト期間最後の日、雨が降り出してきそうな空模様。
なんとなく公園に足を運ぶことにした。

何時もの公園につくと今日は特に景色を見て回るなんてことはしないで一直線にあの東屋に行く。
誰もいない場所であの人を待つわけではなく、なんとなくそのまま勉強を始めた。

「こんにちは、また会えたね」

大分時間が経ってから急に話しかけられ驚いて顔を上げると、目の前にはあの雨の日の先客がいた。

「そう…ですね…」
「はい、これ」

差し出された缶ジュースを一瞬受け取っていものかどうしようか悩んだ。

「あれ? ひょっとして炭酸嫌い?」
「いえ、嫌いではないですけれど…」
「この前口裏合わせて貰ったお礼。受け取ってくれる?」
「あ、はい、ありがとうございます」

向かいに座ってパソコンを置いたあの人を呆然と見ていた。

「どうしたの? よかったら飲んで?」
「え、あの、その・・・・」
「炭酸嫌いだった?」
「いえ、嫌いではないですけど」
「ならよかった。雨も降りだしたしまた二人で雨宿りしようよ」

言われて外を見ると、いつの間にか雨が降り出してきていた。
缶のプルタブを開ける音が二つ重なるとそれを合図に無機質な音しか鳴らない時間が始まった。
私は蜂蜜レモンソーダ、あの人は缶ビール。
本を読みながらパソコンに向かうあの人と、ノートにシャープペンシルを走らせる私。

その時間は、あの人が本をパタリと閉じる音が終わりの合図だった。

「ねえ、君は次はいつここに来る?」

本を閉じる音と同時に話しかけられて吃驚して顔を上げると、真剣な赤い目が私を見つめていた。

「分からないですけど・・・強いて言えば雨が降った時、でしょうか?」
「そう、分かった。次の雨の日に会おうね?」

気が付けばテーブルの上はいつの間にかあの人の荷物は綺麗に片づけられていて「じゃあね」と言いながら私の目の前から去っていく。
雨上がりの公園を何かから逃げるように走るあの人を目で追っていると、何かが落ちる瞬間を見てしまい、それを慌てて拾った。

「あの! 忘れ物!」

私の声がすでに走り去ったあの人に届くことはなく、前回の髪を結った男の人がまた来ないかと思って少し待ってみたけれど来るはずがなかった。
こうしてテストの最終日、2回目の雨宿りはあの人の忘れ物を置き土産に終わった。


私のテストが終わったとたんに晴れが続いて梅雨明け宣言が出され、それ以降雨が降らないうちに夏休みになった。
夏季講習で夏休みがほぼ全部つぶれて時間があまりなかったけれど、学校帰りに何度か公園に寄ってみる。
でも雨が降っていないからあの人が東屋に来ることはなく、忘れ物は何処にでもありそうな普通のハンカチだからそれだけでは持ち主も特定できない。
せめて雨が降ってくれればすぐに返せるのに。
ほんの少しだけ、あの時に次ここに来るのは雨が降ったとき言ったことを後悔した。

学校の授業の合間、窓の方を見ると空は青くて太陽が強い日差しを指してくる。
空を見ながら何となく、一緒に雨宿りしただけのあの人を思い出す。

学校の帰り道、真っ赤に染まる太陽を見て思わずつぶやいた

「梅雨なんて、あけなければよかった」

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雨 3
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