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金平糖の味 5



【二次創作SS】【黎翔×夕鈴】【現代パラレル】

・黎翔さん21歳(大学生)夕鈴17歳(高校生)の時のお話


*-*-*-*-*-*-*-



初めて私服を着た夕鈴を見て動揺してしまい何も言えないまま、暗い山道を2人で手を繋ぎながら無言で歩いていた。
夕鈴は明りの無いその道を歩くのは少し怖いらしい。何も言わないけれど、不安そうな気持ちが伝わってくる。

「大丈夫?」
「大丈夫・・・です」
「もう少しで付くから、頑張ろう?」
「は・・・はい・・・」

少しだけ、手を繋ぐ力を強める。これで夕鈴の不安が軽くなるとは思えないけれど、少しでも軽くなるように。
不意に居なくなってしまわないように。

暫く歩いてようやく目的の場所に到着した。
山の中腹辺りにあるそこは、広い草原のようなその場所は周りに遮るものがない、星の観察には最適な場所だった。

「ついたよ、ここが目的地」
「わぁ・・・! 星が綺麗ですね、先輩!」

雲一つない空にたくさんの星が輝いている。星の観察には最適な環境。
僕の手を放して駆け出して行ってしまった夕鈴に内心笑いつつ、持ってきたシートを広げる。

「寝転んで星を見るとね、星が降ってくるように見えるんだ。シートに寝転がってごらん?」
「で、では、失礼します」

シートの上に寝転がった夕鈴の隣に僕も寝転がった。
遠目から見れば、2人の頭だけが少し近い「ハ」の字を作るみたいになっている状態。
そっと夕鈴の手の上に自分の手を重ねたけれど嫌がられない。よかった。

そう言えば、僕が夕鈴を追いかけるようになったのは、いつ頃からだったんだろう?
雨が降る公園の東屋に急に現れた、雨宿りの相手。
出会って暫くしてから名前をようやく聞けて内心とても嬉しかった。
冬の寒い公園で、ずっと僕を待っていて風邪を引かれるのが嫌だった。そんな思いだけで渡した携帯電話。
話を合わせる為だけに今まで興味が無かった事について必死に調べた事もあった。
先月もらった手作りのチョコレート。正直、脈はあるのかと期待したのは事実。
今日はホワイトデー。今日中にお返しを渡したいというただ、それだけのために夜中高速道路を飛ばしてここまで来て、星の観察と言って夕鈴を呼び出した。
今、僕が密かに持っている想いを夕鈴に言ったら、驚かないで受け止めてくれるのだろうか?

上半身を起こし、ポケットに入っていた飴をいきなり夕鈴の口の中に入れる。
急に口の中に入って来た物に目を白黒させていたようだけれど、特に気にしないで話を続けた。

「はい、これホワイトデーのお返し。気に入るといいけど」
「あ・・・あの、ありがとう・・・ございます」

暗いからその時の表情をよく見る事は出来ず、少し残念な気分だったけれど、口調は嫌がってはいない。
またシートの上に寝転がりながら、無言で星を眺める。

何となく、無言の時間が嫌で星座の説明を始めた。
春は冬の夜空と比べると少し透明度が落ちてしまう事。
東の空高くに輝くしし座、春の大曲線、春の大三角、それに冬より見劣りするけれど、春のダイヤモンドと呼ばれる星達。
天体望遠鏡が無いと見られないけれど、春の銀河がある事。
時間が許す限りゆっくり説明をする。
夕鈴はそんな説明を飽きもせずに聞いてくれていた。

「あとね・・・、運が良ければおとめ座の辺りに流れ星が見えるかもしれない」
「流れ星・・・。私見たこと無いかもしれません」
「流れ星、流れてくるといいね」
「そう・・・ですね」

そのまま2人で暫く黙りこむ。
夕鈴がお願い事をするなら何をお願いするんだろう?
流れ星は流れないまま時間だけが経過し、待っている途中たまに隣を見るとたまに目が合うから笑い返すけれど、表情は見えない。
もし、星が流れてきたら僕が載せるだろう願い事を夕鈴に対して口に出して言おうとした。

「夕鈴あのさ―――」
「はっくしゅん!」

体が冷えてきたのか夕鈴がくしゃみをしている。

「・・・寒い?戻ろう? わがままに突き合せちゃってごめん」
「あの、謝らないでください。楽しかったです、また連れてきてください」
「機会があったら・・・ね? さ、戻ろうか」

その後夕鈴を泊まっている民宿まで送り、僕はそのまま車で家に帰る。
今回夕鈴と何か進展があればいいと思ったけれど、聞けない疑問が増えただけだった。
これでは、いつもの公園で聞きたい事をどう聞こうかと伺っている普段と変わらない。
夕鈴の口に飴を入れたとき、指が唇に当たった。夕鈴とのキスは、どんな味がするんだろう?
今回はただ、解決できない疑問が増えただけだったようだと溜息を付いた。


 友達との勉強合宿最終日。わざわざここまで来た先輩に渡されたホワイトデーのプレゼント。
甘い飴と、クリスマスの頃にもらった物と同じ茶葉、それに金平糖。
明るい所で貰った金平糖を眺める。それは今日見た空にある星を集めた形と色をしていた。

部屋に帰ると、皆に何があったのか問い詰められた。
話の流れで友達に「夕鈴もやっと恋を自覚したのね」と言われてドキッとする。
今まで何となく先輩と続くこの関係を壊したくないと思っていたけれど、それは多分、私が先輩の事を好きだからそう思ってしまったのだと思った。
一つ、取り出して口に放り込む。甘い味が口の中に広がった。この甘い味がきっと恋の味。

一度そういう感情を自覚してしまうと、先輩の事を少し考えただけで胸の奥が痛くなる。
これが人を好きになってしまった証なのだと思った。

今度先輩と会う時、私はどんな顔をしながら会えばいいんだろう?
夜も遅くなって布団に入りながら、窓の隙間から星を見る。
山の上の開いた場所でみる星には適わないけれど、そこから見る星もとてもきれいだった。

流れ星が一つだけ夜空を走る。先輩は、私の事どう思ってくれているんだろう?
私が先輩に対して持っている想いと、同じ想いを持ってくれていますように。

口に入れれば、すぐに溶けてしまう金平糖のように脆い先輩との繋がり。

そんな脆い繋がりが強くなる日がきますようにと流れ星に願いとして乗せ、そのまま眠る。
この願い、叶いますように。



金平糖の味 6


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