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金平糖の味 6


【二次創作SS】【黎翔×夕鈴】【現代パラレル】

・黎翔さん22歳(大学生)夕鈴18歳(高校生)の時のお話


*-*-*-*-*-*-*-

夕鈴と星を見に行ってから数か月、僕は正直イライラしていた。
あれから夕鈴とは何も関係が進まない状態だった。いや、関係が後退してしまったと言った方が正しいかもしれない。
進級して僕は大学4年、時間が取れないということもないけれど、それでも授業が忙しくて前みたいにちょくちょく公園に行く時間を取れなくなってしまった。
オマケに珍しく暇ができて、公園に行こうとしていたら李順に捕まってしまい、行けなくなった事もあった。

夕鈴は高校3年生になって本格的に受験の準備が始まったようで、放課後は補習授業、週末は大半が模試。
このような感じでお互い忙しく、一か月に一回会えればいい方だった。
メールを送れば返事は返ってくるものの、夕鈴本人とは会えていない。
たまに会えても、お菓子を僕にくれるとすぐ逃げるように帰ってしまう。

一度逃げる夕鈴を本気で追いかけた事もあったけれど、逃げ切られてしまった。
それでもメールは無視されないから、嫌われていないとは思うけど、こういう事が続くと本気で落ち込む。
家の前や、学校で出てくるのを待っていようかと思った時もある。けれどあいにく今の僕にはそんな時間が無い。
カレンダーの日付だけが進んでいき、いつの間にか雨の季節が終わって夏になっていた。
そろそろ夏休みも終わる。夏休みの間、一回も夕鈴に会えていない。

“たまには君にゆっくり会いたい。今度海辺の公園に一緒に行かない?”

一つの望みを乗せてメールを送る。
暫くしてようやく戻って来たメールは会えそうな日時が何個かと、作って来て欲しいお菓子を問われた。

その日時から僕の都合のいい日を一日選び、お菓子は特に要らない事を伝える。
夕鈴の手作りお菓子を貰えるチャンスだけれど、そんな事よりも聞きたい、言いたい事があった。


 約束の当日ようやく夕鈴に会えるという嬉しさと緊張から、待ち合わせの時間より早くついてしまう。

指定の場所はいつも会う公園ではなく、海沿いの大きな公園。最寄り駅の広場には大きな噴水広場がある。
時計を見て早く付きすぎたと溜息を付きつつ、座れそうな場所を探していると広場のベンチに夕鈴が座っていた。

「・・・待たせてごめんね?」
「あ、いえ、今来たばかりですから」

今日の夕鈴の私服は、清楚と呼ぶのに相応しい白いワンピース。オレンジ色のショール、手にはバスケット風のバッグ。
髪型は何時もと同じだったけれど、小さな花が付いたヘアピンが付いていた。

「・・・夕鈴ってセンスいいよね。今日の服も・・・すごく可愛い・・・よ?」
「あ・・・あり・・・ありがとうございます」

この前はあまり褒める事が出来なかったから今日は褒めてあげようと頑張るけれど、やっぱり気の利いた褒め言葉はすんなりと出てこない。


「行こう?」
「はい・・・・」

そっと手を出してみたら、一瞬戸惑われたけれど手を握ってくれた。
今日は・・・夕鈴は僕から逃げないみたいだ。それが嬉しい半面、少し恥ずかしい。
今まで何度も手を繋いで、歩いたり走ったりした事はあったのに。今日は周りの目が一杯あるからとでも思っておこう。

公園内をゆっくり歩く。お互いあまり積極的な会話はしない。夏の終わり、コスモスやキキョウ、ススキやヒガンバナ。
秋の草花が咲いている公園内の散策路。好きな花の事を話しながらゆっくりと歩いていた。
海辺の砂浜になっているような所に来た時、夕鈴がもっと奥に行きたそうにしていたけれど転んで服が汚れる未来が見え、止めさせる。

「ここの公園、水族館と観覧車もあるんだ。先に水族館に行ってみない?」
「水族館・・・はい・・・!」

この辺りで漸く顔を見て話をしてくれるようになる。
水族館に行った後はお昼を公園のレストランで食べた。

「ここのレストラン、景色も良くていい場所ですね」
「いい所でしょ? 一度君と来たかったんだ」

ランチを食べ終わり、再度手を繋ぎながら公園内を散策。
食事が終わってレストランを出てから夕鈴は、ずっと僕の問いかけに反応してくれず、何か不味い事を言ったのかと考えてみたけれど、思い当たらない。
観覧車に乗ろうと声を掛けても全く反応してくれない。けれど観覧車のゴンドラが来るとそれに素直に乗る。
夕鈴は一体、何を・・・したいんだろう?

「夕鈴、ねえ夕鈴ってば」

声を掛けると急にハッとした表情になった夕鈴は、ここが何処か理解していないようだった。

「はっ! こ、ここは・・・って先輩、近い! 近いです!!!」
「いやいや、全然近すぎる事は無いよ?」

狭いゴンドラだから圧迫感があって近く感じてしまうのかもしれないけれど、ただ隣同士に座っていただけだった。
自分の状況を理解した夕鈴は慌てて窓の方へ、僕からなるべく離れるように逃げて行く。

「ねえ、どうしたの? さっきから心ここにあらずって感じだけど?」
「な・・・ なんでもありません・・・よ・・・」

バックで赤すぎる顔を半分隠して言われても、説得力は無い・・・。

「そう? なんでもないの? 僕は、君が傍にいてずっとドキドキしているけど?」
「え・・・?」
「君は? 君はどうなの? 夕鈴は、僕の事どう思っているの?」
「・・・・・・」

今まで隠していた、聞くに聞けない疑問をストレートに言った。
心臓があり得ないくらい早く波打っている。そのまま暫く沈黙が続き、短い時間が永遠と思えるくらい長く感じる。
ゴンドラが観覧車の頂上に差し掛かったあたり、ようやく夕鈴が口を開いた。

「あの、先輩と一緒にいると凄くドキドキして、自分が自分じゃなくて・・・」
「それで今まで僕から逃げ回っていたって事でいい?」
「・・・そうです」
「よかった、嫌われた訳じゃないんだね?」
「嫌いになるなんて事無いです!!」

それだけは、はっきり力説するように言われて思わず噴き出す。

「笑わないでください!!」
「ごめんごめん、でも君と僕が同じ気持ちでよかった」
「え・・・」
「君が好きだよ? だからこれから、2人の時間を始めよう?」

手を差し出しながら返事を待っていると、か細い声で「はい」と聞こえてきたから、そのまま手を引っ張って引き寄せた。

ようやく夕鈴の気持ちを聞けた嬉しさから、思わず夕鈴を抱きしめる腕に力を込める。
これで君は僕の彼女。逃がさないから覚悟してね・・・?

腕の中で小さな変化に気が付いた。気のせいか夕鈴は前より痩せていたような気がした。

「夕鈴痩せた? 綺麗になるのは大歓迎だけど、無理しないでね?」

目を見つめながら言うと、少しむっとしたような表情をされた。
こうしていると、夕鈴の桃色の唇が目の前にあって、つい、キスをしたくなる。
だから、そのままキスをしようとゆっくり近づくと、急に口に何か入って来た。

その強烈な味に思わずたじろぐ。

「えっと夕鈴、何を・・・?」
「ハッカ飴です。星を見に連れて行ってくれた時もらった飴のお礼です」

吐き出すことも出来ず、何とか飲み込む。
僕はこの味が正直言って苦手だった。口からハッカ飴が無くなって喋れるようになった時、観覧車は降車口に到着する。

観覧車を降りて口の中を飲み物で誤魔化しながらしてやられたと項垂れていると、そんな僕を見て夕鈴は何時ものように笑ってくれていた。

「そろそろ帰ろう。送っていくよ?」
「一人で帰れますよ、それに先輩の家の方がここから近いじゃないですか」
「僕が夕鈴より先に電車降りたくないだけ。だから一緒に帰ろ?」

手を差し出すと、一瞬で赤くなった顔で頷き、手を握ってくれる。それを僕は肯定と取る。

少しほろ苦い思い出が出来た今回のデート。
でもたまにはこんな苦い思い出があってもいいと思いながら、夕鈴と手を繋ぎ家路を急ぐ。

「先輩、この前金平糖ありがとうございました。甘くておいしかったです」
「今度会う時、口直しに甘いお菓子を頂戴?」
「はい、分かりました」

漸く夕鈴をはっきり「彼女」と言ってもいい関係になれた。
この後夕鈴と金平糖のように、甘い、甘い時間をずっと感じていたい。


→ 金平糖の味 7



終わり・・・?
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